B2B Marketing Analyticsとは?ダッシュボードの種類や設定方法、注意点まで徹底解説
この記事でわかること
- B2B marketing analyticsの概要やダッシュボードの種類
- B2B marketing analyticsの設定方法
- B2B marketing analyticsを利用する際の注意点
執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀
Salesforce社が提供するAccount Engagement(旧 Pardot)に搭載されているアプリケーションであるB2B Marketing Analytics(B2B MA)。
ダッシュボードやAIを活用して動的なデータ分析結果を視覚化していつでも確認できることが特徴です。
ただ、B2B Marketing Analyticsはデフォルトで使えるようになるわけではありません。設定手順を踏んで有効化しないと正しく利用できないのです。また、各ダッシュボードがどんな効果が期待できるのか理解せずに使用してもビジネスへの効果は下がってしまいます。
B2B Marketing Analyticsを効果的に利用するためにも、アプリケーションの概要から設定手順、注意点までしっかりと理解して実装していくことが重要です。
本記事では、B2B Marketing Analyticsの概要や設定方法、導入にあたっての注意点など解説していきます。ぜひ、導入検討にお役立てください。
参照:Account Engagement(旧 Pardot)とは?機能や特徴、他のMAツールとの比較も含めて徹底解説
目次
B2B Marketing Analyticsとは
B2B Marketing Analyticsとは、Salesforce社が提供するマーケティングデータとセールスデータをセグメント化して、そのデータを視覚化するCRMアナリティクスアプリケーションのことです。
ダッシュボードやAIを活用してビジネスの効率的な成長の促進、チームの連携が図れます。特に、主要な取引先との繋がりの強化やCRMを中心とした各部門の連携、マーケティング効果を高めて顧客関係が強化されるなどユーザー企業にとってのベネフィットが多いです。
B2B Marketing Analyticsに必要なライセンス
B2B Marketing Analyticsは、Salesforce社が提供するAccount EngagementのPlusエディション以上のライセンスが1つ以上必要になります。
B2B Marketing Analyticsを利用できるエディションと料金は以下の通りです。
エディション名 | 料金(税抜) |
---|---|
Plus | 330,000円/月(年間契約) |
Advanced | 528,000円/月(年間契約) |
Premium | 1,800,000円/月(年間契約) |
購入時期によってはライセンスのB2B Marketing Analytics有効化方法が異なるため注意が必要です。B2B Marketing Analytics権限セットライセンスの場合は必要な権限は使用可能になっていますが、Analytics Embedded App 権限セットライセンスの場合、別途カスタム権限セットを作成する必要があります。
B2B Marketing Analyticsの構成要素
B2B Marketing Analyticsの構成要素として主に以下の要素があげられます。
- データセット
- レンズ
- ダッシュボード
データセットからレンズを作成し、レンズからダッシュボードが作成されます。それぞれの構成要素について詳しくみていきましょう。
データセット
データセットは、B2B Marketing Analyticsで対話型の探索ができるように形式が設定され最適化されたソースデータのコレクションのことです。
ダッシュボードで各種データを活用するために、データソースから必要なデータを抜き出して各種データセットに格納します。項目が整理されたデータセットを用いることでレンズ作成時に目的に準拠した項目選びをスムーズにすることが可能です。
レンズ
レンズとは、データセットのデータを基に作成された特定のビュー(グラフ)です。分析や視覚化を行うために使用されており、各種条件を設定することで指標としての役割を果たします。
このレンズ単体で利用することも可能ですが、基本的に作成されたレンズを目的に合わせてまとめてダッシュボードに配置することが一般的です。このときに、配置されたレンズはステップとして扱われます。ダッシュボード上のステップは他のステップとの連携が可能で、ダッシュボード上のフィルター機能と各ステップをグループ化して使用することで、動的なダッシュボード作成に役立ちます。
ダッシュボード
ダッシュボードは、事前定義された前述のデータセットとレンズを基に複数の指標がまとめて可視化されたツールのことです。
B2B Marketing Analyticsでは、チーム全員のニーズを満たす3つの事前に作成されたダッシュボードと、いくつかの追加手順で作成可能な3つのダッシュボードの計6種類のダッシュボードが作成できます。
各ダッシュボードは特徴や目的が異なるため、次章ではそんなB2B Marketing Analyticsで搭載できるダッシュボード種類について解説していきます。
B2B Marketing Analyticsのダッシュボード
B2B Marketing Analyticsのダッシュボードには、チーム全員のニーズを満たす3つの事前作成済みダッシュボードと、各種追加手順の実行で作成可能な3つのダッシュボードの計6種類のダッシュボードが作成可能です。
作成可能なダッシュボードの種類は以下の通りとなります。
- Engaementダッシュボード
- Pipelineダッシュボード
- Marketing Managerダッシュボード
- Multi-Touch Attributionダッシュボード
- Account-Based Marketingダッシュボード
- Einstein Behavior Scoringダッシュボード
それぞれ詳しくみていきましょう。
Engaementダッシュボード
画像出典:Trailhead
Engaementダッシュボードでは、マーケティングエンゲージメントデータを基に特定のマーケティングアセットと営業結果の間の繋がりを調べることが可能なダッシュボードです。Pardotの主要なマーケティングアセットであるリストメール・フォーム・ランディングページに焦点が当てられています。
特に営業活動の戦略やコンテンツ、コラボレーション、プロスペクトがどの程度つながりがあるのかを可視化することが可能です。また個々のデータソースが営業活動にどの程度貢献しているかも表示されます。
Engaementダッシュボードでは4つのフィルターを使用することができ、年・四半期・キャンペーン・タグに基づいたデータの可視化ができることがポイントです。
Pipelineダッシュボード
画像出典:Trailhead
Pipelineダッシュボードでは、マーケティングパイプラインのデータをエンドツーエンドで可視化することが可能なダッシュボードです。総計値は商談データセット、プロスペクトデータセット、ビジターデータセットから取得されます。
表示されるビューでは、パイプ金額やリード数、投資収益率、コンバージョン率が表示されることが特徴です。
例えば、リード顧客がプロスペクト、MQL、SQLをへてどれだけ成立したのかを表示できます。また、フィルター機能を活用することで、特定のキャンペーンに関連するリード顧客のパイプラインを表示可能で、該当するキャンペーンに関するリード顧客と営業活動状況のつながりに関するインサイトが得られます。
Marketing Managerダッシュボード
画像出典:Trailhead
Marketing Managerダッシュボードは、パイプラインやキャンペーン、エンゲージメントに関するデータを指標として表示される標準ダッシュボードです。
パイプライン内の商談の概要やコスト、収益、商談成功率、リード顧客数、成約数、キャンペーン投資収益率を表示するレンズが設定されています。
このダッシュボードによって、マーケティング活動の営業への影響に関するインサイトを得ることが可能です。過去のキャンペーン分析を行い、何が成功して何が失敗したのか見極める際に活用できます。
Multi-Touch Attributionダッシュボード
Multi-Touch Attributionダッシュボードは、3つの標準搭載されたキャンペーンインフルエンスモデルやカスタム属性モデルを基にキャンペーン戦略を追跡して分析できるダッシュボードです。
インフルエンスモデルとして、初回接触・最終回接触・均等分布の3つが標準搭載されています。初回接触モデルでは、キャンペーンによって生まれたリード顧客数を見てキャンペーンがどの程度リード顧客作成に有効だったか評価可能です。最終回接触モデルでは、どのキャンペーンが最も成果をだしたのか確認できます。
独自に設定したカスタム属性モデルで投資収益率などの詳細を確認できるようにすることで、キャンペーンを今後継続するかの判断に活用可能です。
Account-Based Marketingダッシュボード
Account-Based Marketingダッシュボードは、B2Bマーケティングにおける特定の企業やアカウントを対象にしたマーケティング戦略の効果を可視化できるダッシュボードです。
このダッシュボードでは、パイプライン金額や商談数、スコア、成立/不成立率、フェーズ値、商談のテーブルなどの指標が含まれており、マーケティング活動の効果を定量的に評価できます。
また、ターゲットアカウントの識別やエンゲージメント追跡、キャンペーンパフォーマンスの評価も可能で、ABM戦略の全体像を把握できることが魅力です。
Einstein Behavior Scoringダッシュボード
Einstein Behavior Scoringダッシュボードは、AI分析ができるSalesforceの機能である「Einstein」がどのようにエンゲージメントデータを使用してそのモデルを作成するのか分析できるダッシュボードです。
商談に最も大きな影響を与えるエンゲージメントアクティビティの確認が可能で、どのアセットのパフォーマンスが最もパフォーマンス性があるのかの詳細を把握できます。
こちらのダッシュボードを活用するためには、Account EngagementのAdvancedエディションとSales Cloud、Service Cloud、CRMいずれかのユーザー権限セットライセンスが必要です。各種条件を満たしてAccount Engagement Einsteinを有効にすることで利用できます。
Salesforceのデフォルト機能として利用できるダッシュボードについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
参照:Salesforceのダッシュボードとは?機能や作成方法、おすすめの活用事例を紹介
B2B Marketing Analyticsの設定方法
B2B Marketing Analyticsを利用するためには初期設定や確認を行うことが必要です。
こちらでは、B2B Marketing Analyticsの各種設定方法についてみていきましょう。
B2B Marketing Analyticsの利用ユーザーの選択
Salesforceの設定>クイック検索で「analytics」と検索>B2B Marketing Analytics配下の使用開始をクリックします。
設定ガイド画面が表示されるので、①B2B Marketing Analyticsを使用できるユーザーセクションのマーケティングデータの共有から「割り当ての管理」をクリックし、遷移後の画面で「選択済みの権限セット」にインテグレーションユーザーを追加します。
更に、ユーザー権限の割り当てから「割り当ての管理」をクリックし、B2B Marketing Analyticsにアクセスする必要があるユーザーを追加します。
B2B Marketing Analyticsの権限
コネクターユーザーとB2B Marketing Analyticsユーザー用の権限セットを作成して割り当てます。
権限セットライセンス | 権限セット | システム権限 | |
---|---|---|---|
コネクターユーザー | ・B2B Marketing Analytics ・CRM ユーザー、営業ユーザー、サービスユーザーのいずれか | ・Pardot コネクタユーザー ・CRM ユーザー、Sales Cloud ユーザー、Service Cloud ユーザーのいずれか ・B2B Marketing Analytics アプリケーション | ・B2B Marketing Analytics アプリケーションの作成 ・CRM Analytics データのダウンロード ・CRM Analytics データフローの編集 ・CRM Analytics テンプレートアプリケーションの管理 ・CRM Analytics テンプレートアプリケーションの使用 |
インテグレーションユーザー | ・B2B Marketing Analytics | ・Pardot インテグレーションユーザー ・B2B Marketing Analytics アプリケーション | ・B2B Marketing Analytics アプリケーションの作成 ・CRM Analytics データのダウンロード ・CRM Analytics データフローの編集 ・CRM Analytics テンプレートアプリケーションの管理 ・CRM Analytics テンプレートアプリケーションの使用 |
Analytics管理ユーザ | ・B2B Marketing Analytics、Account Engagement ・CRM ユーザー、営業ユーザー、サービスユーザーのいずれか | ・Account Engagement ユーザー、CRM ユーザー、Sales Cloud ユーザー、Service Cloud ユーザーのいずれか ・B2B Marketing Analytics アプリケーション | ・B2B Marketing Analytics アプリケーションの作成 ・CRM Analytics データのダウンロード ・CRM Analytics データフローの編集 ・CRM Analytics テンプレートアプリケーションの管理 ・CRM Analytics テンプレートアプリケーションの使用 |
Analytics利用ユーザー | ・B2B Marketing Analytics、Account Engagement ・CRM ユーザー、営業ユーザー、サービスユーザーのいずれか | ・Account Engagement ユーザー、CRM ユーザー、Sales Cloud ユーザー、Service Cloud ユーザーのいずれか ・B2B Marketing Analytics アプリケーション | ・B2B Marketing Analytics アプリケーション ・CRM Analytics テンプレートアプリケーションの使用 |
CRM Analyticsの有効化
次に②CRM Analyticsを有効化セクションから設定を進めます。「CRM Analytics設定を開く」をクリックし、CRM Analuticsを有効にします。データ行ヘッダーと設定タイルが表示されていると有効になっています。
次にデータ同期と接続を有効化から「CRM Analytics設定を開く」をクリックし、「データ同期と接続を有効化」を選択し保存します。
複数ををスケジュールし、設定と権限セットが整ったらAnalytics Studioを開いてB2B Marketing Analyticsアプリケーションの作成が開始できます。
Salesforce社からB2B Marketing Analyticsの実装ガイドも公開されているので、そちらも合わせてご確認ください。
参照:B2B Marketing Analytics 実装ガイド
B2B Marketing Analyticsで覚えておくべき用語
こちらではB2B Marketing Analyticsで覚えておくべき用語一覧について紹介していきます。
用語 | 説明 |
---|---|
集計 | グルーピングに基づいてデータを集めること。 |
アプリケーション | CRM Analyticsにおいて、データ分析を同僚と共有するのに適した組み合わせのダッシュボード、レンズ、データセットが含まれます。 フォルダーのように利用ができ、データプロジェクトの共有、整理が可能です。 |
ダッシュボード | 1つ以上のレンズでデータに基づいて選ばれたグラフや総計値、表の集まりです。 |
データセット | 対話型の探索ができるように形式が設定され、最適化されたソースデータのセット。 |
ディメンション | 地域や商品名、モデル番号などの定性的な値。 |
フィルター | データに検索条件を適用して結果を抽出できます。次のフィルターが含まれます。 ・日付範囲 ・商談フェーズ ・タグ |
グループ | 指定したディメンションでデータをグルーピングします。 |
レンズ | データセットのデータの特定のビュー(グラフ)です。 |
基準 | 収益や換算レートなどの定量的な値です。 |
テンプレート | KPIと視覚化が事前に設定された分析アプリケーションフレームワークのことです。 |
視覚化 | データを視覚的に表現したもののことです。 (例:チャート、グラフ、比較表) |
B2B Marketing Analyticsを利用する際の注意点
最後にB2B Marketing Analyticsの注意点について解説していきます。
Sandboxでの使用は推奨されていない
B2B Marketing Analyticsは、Sandbox環境での使用が推奨されていないことが注意点です。
というのも、Sandbox環境はテストのために異なる設定やデータを使用しており、実際の運用環境と異なる場合が少なくありません。またリアルタイムデータの欠如やパフォーマンスの差異、機能も限られるなど正確な分析判断が難しいです。
ダッシュボードをテストする際には、設定と探索のための非公開アプリケーションを作成して、テストが完了したら同僚と共有しましょう。
Sandboxについて詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
参照:SalesforceのSandboxとは?メリットや種類、作成方法について分かりやすく解説
複数ビジネスユニットでの利用の制限
B2B Marketing Analyticsは、複数のビジネスユニットを使用できますが個別のダッシュボードで動作が異なる場合があるため注意が必要です。
アプリケーション設定時にビジネスユニット毎にアプリケーションを作成することが可能で、各ダッシュボードの利用可能なデータをビジネスユニットごとに制限できます。
制限することで、管理者との区別をつけて情報漏洩リスクを抑えるなど柔軟な活用が可能になるのです。
まとめ
本記事では、B2B Marketing Analyticsの概要や各ダッシュボード種類、設定方法などについて解説してきました。
B2B Marketing Analyticsの設定方法について理解いただけましたでしょうか?
B2B Marketing Analyticsは、ダッシュボードやAI機能を活用することでビジネスの効率的な成長の促進やチーム、部門間、取引先との繋がりを強化してくれるなどマーケティングに置けるベネフィットが多いです。
設定方法も単純で、利用できるユーザーに関する設定も柔軟に実施できます。そのため、営業担当者や管理者、代表といった各立場毎に違ったダッシュボードを表示可能です。
既にSalesforceを導入されている企業で、よりデータ分析を強化したいと考える方や、営業活動の可視化をさせて業務戦略の立案に役立てたい方は、B2B Marketing Analyticsの導入をご検討ください。
ストラではB2B Marketing Analyticsを含むSalesforce製品の環境設定や運用をご支援いたします。自社が持つデータを活用して業務の改善に役立てたいと思われたご担当者様は、こちらのお問い合わせフォームよりまずはお気軽にご相談してみてください。
執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀
大学卒業後、株式会社TBI JAPANに入社。株式会社Paykeに取締役として出向し訪日旅行者向けモバイルアプリ及び製造小売り向けSaaSプロダクトの立ち上げを行う。
アクセンチュア株式会社では大手メディア・総合人材企業のセールス・マーケティング領域の戦略策定や業務改革、SFA・MAツール等の導入及び活用支援業務に従事。
株式会社Paykeに再入社し約10億円の資金調達を行いビジネスサイドを管掌した後、Strh株式会社を設立し代表取締役に就任。
▼保有資格
Salesforce認定アドミニストレーター
Salesforce認定Pardotスペシャリスト
Salesforce認定Pardotコンサルタント
Salesforce認定Sales Cloudコンサルタント