コンテンツマーケティングを始めるべき理由や、陥りがちな失敗とそこから学ぶ改善策をわかりやすくご紹介
この記事でわかること
- BtoBマーケティングにおけるコンテンツマーケティングの基本
- BtoBこそコンテンツマーケティングを取り入れるべき理由
- コンテンツマーケティングを行うにあたって陥りがちな失敗
- 失敗から学ぶ改善策
執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀
前回の記事では、コンテンツマーケティングをこれから始める方に向けて、「そもそもコンテンツマーケティングとはなにか」という概念から種類、実施の手順など、基本的な知識について解説しました。今回は、コンテンツマーケティングに取り組むうえで陥りやすい失敗や、BtoBでコンテンツマーケティングを成功させるための方法を、詳しくご紹介していきます!
参照:コンテンツマーケティングとは?成功事例や具体的な進め方、手法まで徹底解説
参照:BtoBマーケティングとは?戦略の立て方やそのプロセス、成功事例までプロが解説
目次
コンテンツマーケティングの基本
まずは本題に入る前にコンテンツマーケティングの基本から改めてご紹介いたします。
コンテンツマーケティングとは?
コンテンツマーケティングとは顧客にとって価値のあるコンテンツを配信することで、顧客の持つニーズを具体的なものへと育成し、購買や利用といった実成果に結びつけるマーケティング手法です。ブログ記事や動画といったWeb上で閲覧できるコンテンツを提供するという性質上、Webマーケティングの一種と言えるでしょう。
コンテンツマーケティングが注目された背景
今や多くの企業が取り組み始めているコンテンツマーケティングですが、2010年頃から徐々に関心が高まり、本格的に注目されるようになったのは2014年頃からだと言われています。
注目された大きな理由としては、インターネットの普及により、ソーシャルメディアを通して誰もが簡単に情報収集することができるようになったことです。インターネットの普及前は、消費者の購買行動に至るまでのプロセスが描かれた「AIDMA」モデルが主流の考え方とされていましたが、インターネットの普及後は「AISAS」に変わったように、消費者の購買行動に関わる情報チャネルの変化に大きく影響しました。
また、後述しますが購買企業の約70%は事前に公式サイトやSNSで情報を収集しており、そういった意味でも有益なコンテンツをもとにしたコンテンツマーケティングは昨今のマーケティング活動において重要な要素となっています。
コンテンツマーケティングの主な種類
BtoBにおけるコンテンツマーケティングの種類としては主に5つあります。更に各コンテンツマーケティング施策の中にも種別が存在します。
- ブログ記事
- メールマガジン
- ホワイトペーパー
- 動画
- セミナー・ウェビナー
それぞれのメリットデメリットや詳細については、基本編の記事に記載してありますのでこちらも合わせてご覧ください。
BtoBビジネスこそコンテンツマーケティングを始めるべき理由6つの理由
①コンテンツがチャンスにつながる
情報を取得するチャネルが増えたことによって、特にBtoBの分野では、買い手が商品の購入前にインターネットやSNSを活用して事前調査を行っていることが当たり前になりました。2022年に実施されたサイトエンジン株式会社による調査によると、商材購入にあたっての情報源は49.5%が公式サイトから、また20.6%がSNSから入手しているということがわかっています。つまり、コンテンツがインターネット上にないと顧客の目に留まるまでもなく、チャンスを逃すことにつながるのです。
出典:サイトエンジン社_購買者から見たWebサイトに関するアンケート調査をもとにStrhが作成
②営業の役割が以前と変わった
顧客がコンテンツを通じて事前に情報を収集していることで「この商品について話を聞きたい」と直接聞きに来る人は少なくなり、「商品に関する詳細なコンテンツを提供」するという行為を行う主体は、人からWebサイトに移行してきています。
つまり、顧客と初めて接点を持つのが営業担当者ではなく、Webサイトなどの商品やサービスの詳細情報やレビューなどのコンテンツに変わっているのです。このように購買行動の中で、「コンテンツ」が果たす役割が大きくなっています。
③顧客が商材について入念に情報収集している
前述の通り、「WebサイトやSNSから商材の情報を得ている」という顧客の情報収集行動からも、「Webサイトにコンテンツがない=ビジネスチャンスを失う」と言っても過言ではありません。
自社にコンタクトがあった時点で顧客の情報収集はすでに終わっており、営業担当者よりも顧客の方が製品やサービスについて詳しいこともあるかもしれません。そうした中で、また一から製品に関する説明をしてしまうと、逆に購買意欲が削がれてしまうことにもつながってしまうのです。
④営業プロセスと結びつけて戦略的コンテンツを活用することができる
BtoBビジネスの場合ではコンテンツマーケティングだけで完結するのではなく、営業プロセスと結びつけることで、受注につなげていくことになります。
デジタルだけで完結するケースは非常に少なく、消耗品などの商材を除いて、従来型の展示会やセミナーなどリアルな場でのスタッフによる説明や、営業担当者による営業活動、購入後の人的なフォローも重要になります。
BtoBの購買は対企業の取引であるため、一度取引をすることで、長期にわたり関係が続くこともBtoBならではの特徴となります。だからこそコンテンツマーケティングをうまく活用することで戦略的に営業や受注後の顧客フォローを行うことが可能になります。
⑤5年後、10年後、今と同じ営業体制が保てるか
コンテンツマーケティングに取り組むべき理由の1つは、現状と同じ営業体制を組むことができるかどうかです。労働人口が減少している今だからこそ、リソースをどのフェーズでどのように活用するかが重要になります。人が関わる必要性が高い営業の部分に人的リソースを集中透過し、コンテンツを通して見込み顧客を呼び込む入口部分の営業を賄うことで、有効に行うことができます。
今からコンテンツマーケティングに取り組むことで、5年後、10年後に優秀な営業として花を咲かせるコンテンツを育てることに繋がるのです。コンテンツマーケティングの重要性はわかっていても、なかなか本格的に推進できず、公開できるコンテンツがまだないと感じる企業もあるかもしれませんが、商品やサービスを提供しているのであれば、①どんなときに役に立つのか②他社にはない優位性はなにか③顧客からどんな評価をされているのか などから掘り下げることで、自社独自のコンテンツを生み出すことができるでしょう。
⑥コンテンツはアセットとなる
各社様々な方法で見込客の獲得を行うための活動を行っていますが、そのなかでもマーケティング施策はフローの施策とストックの施策の2種類の施策に大別されます。例えば広告は基本的にはフローの施策で、出稿を止めればリード獲得活動はそこで止まってしまいます。
一方でコンテンツに関しては短期的には直接的な利益に結び付きにくいケースも多いですが、中長期視点で顧客にとって有益なコンテンツを作成し続けることで、そのコンテンツは長期間にわたって会社のアセットとなり、オーガニックリードの獲得や、他コンテンツへの流用など様々なベネフィットをもたらします。
コンテンツマーケティングでよくある課題と解決方法
ここからはコンテンツマーケティングの中でも多くの企業が取り組もうと考えるものの、運用を軌道に乗せるハードルが比較的高い「オウンドメディア」を中心に、コンテンツマーケティングを行う上でよくある課題と解決方法をご紹介します。
①社内のリソース不足
オウンドメディアをはじめ、コンテンツマーケティングに取り組む際に一番よくある課題は、社内でコンテンツマーケティングに取り組む時間を確保できるリソースが足りず、コンテンツを断続的に作成することができないという点です。
また、「リソース不足」という中でも、一度コンテンツマーケティングに取り組んでいたものの、コンテンツ制作を初めてすぐ挫折してしまった例も少なくありません。例えば、自社メディアの運営やメルマガ配信を始めても、なかなかアクセス数が増えず、結果3ヶ月以内で更新をストップしてしまうケースや、効果が目に見えづらく、3ヶ月経過してもアクセス数が増えず滞ってしまうといったケースです。
上記が理由としてよく挙げられますが、どんなに人気のサービスサイトもたった3ヶ月で人気になったわけではありません。半年から1年以上かけて顧客にとって求められる質の高いコンテンツを提供し続けるために、トライアンドエラーを繰り返すことで、大きなサイトに育てたわけです。長期でコンテンツを続けていくという意味でも、社内でのリソースの確保は大事な要因となります。
②効果的なコンテンツマーケティング戦術の欠如
マーケティングの専門家などからも指摘される課題でもあります。
具体的には
- 購入希望者を集めるだけ集めて、次のプロセスが用意されていない
- 集めた購入希望者の情報をどのように絞り込むのか定まっていない
- コストや時間がかかりすぎている、効果が見えにくい
つまり、コンテンツを作るだけ作っても、その後の商談獲得や受注に向けてどのような導線を設計するのか具体的な戦術がない。また、効果測定の基準もないということです。
コンテンツ作成がゴールとなり、その後のプロセスを検討していないケースがコンテンツマーケティングに取り組む際に欠如しがちなパターンとなっています。
③顧客視点でのコンテンツを制作できない
どんなに商材について理解が深く、専門知識がついていたとしても、コンテンツを見るユーザーが途中で飽きてしまったり、専門用語が多くて理解できなければ意味がありません。ターゲットは誰なのか、その人はどのような課題を持っていてどのような情報ニーズがあるのかを少なくとも明確にし、その人に向けたコンテンツを用意する事が重要です。
自社の商材を用いて読者の課題を解決するということに視点を置き、コンテンツを制作すると良いでしょう。
その他、自社の商材に関連しそうなトピックを検討し、様々な切り口でアプローチできるコンテンツがあるとさらに内容を充実させることができます。
④コンテンツが続かない
最初はコンテンツ生成がうまく回っているかもしれませんが、それをすべて公開して、断続的な公開ができなくなってしまっては意味がありません。実際に、コンテンツの制作を始めてみると、品質や体制、またスケジュールなど、多方面でさまざまな課題が生じやすくなります。スムーズな公開のために無理のない運用オペレーションと効率的な制作スケジュールを立てることを心がけ、継続しながら質と量を深めることが重要です。
コンテンツマーケティングの失敗から学ぶ改善策
①コンテンツマーケティングを実行する編集チームを立ち上げる
コンテンツ制作を行っていくにあたって、それを実行していく内部環境が整っていることが重要です。コンテンツマーケティングを実行していくための編集チームを結成し、コンテンツ制作から公開まで計画的に進めていけるようにします。
例えばメディアの場合、基本的に下記編集チーム業務を行うことになります。
チーム | 担当者 | 業務内容 |
---|---|---|
企画立案 | 編集チーム | ・ターゲット設定 ・テーマ内容、構成案の検討 ・インタビューする場合は、取材先や事前調査などの検討 |
トンマナ、 デザインの検討 | 編集チーム/Webデザイナー | ・サイトの文章やレイアウト ・デザインを検討する ・写真やイラストの利用 |
取材依頼(取材が必要な場合) | 編集チーム | ・取材相手にアポ入れ、日程調整 ・執筆依頼 |
取材の準備(取材が必要な場合) | 編集チーム/ライター/フォトグラファー | ・ロケハン、事前打ち合わせ ・取材先に質問内容を送付 |
取材(取材が必要な場合) | 取材先、ライターに原稿チェック依頼 | ・インタビュー、撮影 |
レイアウトデザインの検討 | 編集チーム/Webデザイナー | |
原稿執筆 | 編集チーム/ライター | |
ビジュアル制作 | イラスト、レンタル写真などビジュアルの選定、依頼 | ・イラスト、レンタル写真などビジュアルの選定、依頼 |
取材原稿確認 | 取材先、ライターに原稿チェック依頼 | ・取材先、ライターに原稿チェック依頼 |
デザイン、コーディング | コンテンツのデザインとHTML化 | ・コンテンツのデザインとHTML化 |
デザイン確認 | ウェブデザインの確認 | ・ウェブデザインの確認 |
校正 | 編集チーム/校閲者 | ・記事の校正 |
効果計測・分析 | 編集チーム / マーケティングチーム | ・公開したコンテンツのアクセスやCTR,CVRなどの計測と改善策の検討など |
②まずは公開本数をKPIとして設定する
例えばオウンドメディアの運用であれば、立ち上げのフェーズにおいては公開本数をKPIとして設定することで、スケジュールを具体的に立てやすくなることはもちろん、断続的なコンテンツの公開を達成することに繋がります。
KPIを公開本数に置く際は、まず年間公開本数を決めて、それをベースに月間公開本数を設定します。
ストラでは実際、オウンドメディア立ち上げ期においては年間公開本数と月間公開本数をKPIとして設定し、運用を開始してまずは運用オペレーションの確立に力点を置いていました。
③コンテンツの公開に向けて効率的なスケジュール管理を行う
コンテンツ制作における重要事項
社内だけでなく外部も含め関わるメンバーが多いため、全員のスケジュールも加味して無理のない計画を立てることも重要です。
制作に関わるメンバーでスケジュールを共有し、安定した進行を目指すことで長期的にコンテンツを制作することにも繋がります。また、進行状況を明確に把握することで、遅延が発生していたとしても早めに手を打つことができます。
また、無理のない制作スケジュールを立てるために行うべきこととしては以下のようなことが考えられます。
- コンテンツ制作の全工程を洗い出すこと
- コンテンツの公開から逆算してスタート時期を把握する
- すべての要素の漏れを防いだり、担当者の負担を把握する
■月間スケジュールの組み方例(オウンドメディアの場合)
- 執筆記事や投稿に関するテーマ決め
- 公開日を設定
- 構成案作成期日の設定
- 初稿提出日を設定
- 校閲作業、サムネイル/挿入画像の作成期限、設定
- 執筆/画像 修正作業
- 最終確認/公開予約
スプレッドシートやタスク管理ツールを利用して制作に関わるタスク・スケジュールを管理することも重要なポイントです。
無理のないスケジュールを組んだはずなのに遅延が発生する
各所に調整して無理のない制作スケジュールを組んだのに、何故か計画通りにいかないことで、結果的に断続的なコンテンツの公開に繋がらないケースも多々有るのではないでしょうか。スケジュールが滞る理由として❶悩んだ挙げ句、どういった内容を書けば良いのかわからなくなって作業が止まってしまう❷大幅な修正がかかるということがよくあります。
❶悩んだ挙げ句、どういった内容を書けば良いのかわからなくなって作業が止まってしまう
こうした場合は、無理にでも手を動かすことが吉。些細なことでも、コンテンツに必要な内容を箇条書きでもいいので並べていき、徐々に内容を掘り下げていく方法もおすすめです。
それでも悩む箇所があったり、うまく進められていないと感じた際は、無理に一人で解決しようとせず、チームで積極的に投げかけることで、課題解決をスムーズに行うことが期待できます。
❷大幅な修正が発生する
一つ一つのタスクで個人作業が多く発生しがちなメディアだからこそ、チームへの共有が遅くなってしまったり、ある程度完成度を高めてから共有するケースが発生しがちだと思います。その場合起こり得るのが、「9割出来上がっていたのに、修正点が多くほぼ振り出しに戻ってしまった、期限までに修正が間に合わない」という要因に繋がります。
構成段階などなるべく早い段階でコンテンツ制作チームで進捗確認や、相談することが大切です。取り組む際は、一回で完璧を目指そうとせず、2〜3割程度の出来栄えで構わないので、こまめに進捗確認を行うことを意識しましょう。
④タイトルと構成を工夫する
どれだけよい企画でも実際のコンテンツの質が悪いとターゲットとなる読者は離脱してしまいます。
特にタイトルは顧客にとって一番最初に目に入るものなので、慎重に検討しましょう。
タイトルの決めの際に気をつけるポイント
■キーワード:タイトルに読者の興味を引くキーワード、ニーズにあったキーワードが入っているか
コンテンツのポイントになるようなキーワードやニーズに合ったキーワードを検討し、なるべくタイトルの最初の方に持ってくることで、読者の興味関心を引くことができます。
■長さ:タイトルが長すぎないか
タイトルが長いとすべて表示されなくなるため、伝えたい内容はなるべく単語にして、短く一目で内容がわかるようなタイトルにしましょう。
■意外性:タイトルに意外性が含まれているか
必ずしも意外性のあるタイトルが重要ではないですが、読者の興味関心を引き寄せるためのテクニックとして、理解しておくとよいでしょう。
■構成
- 背景:世の中のトレンドを示す
- 課題:どんなことに困っているのかを示す
- 解決策:製品によって解決できることを示す
- 効果、実績:上がった効果と実績を示す
- 展望:その商品が広まることで社会が変わるといった願望を示す
⑤公開をゴールにしない
継続して質と量の向上を図る
まずは継続することを目標に設定するのがおすすめです。1ヶ月に3〜4本各コンテンツをアップすることで、想定よりも短期間で効果が現れるかもしれません。
半年以上経過してもなかなか効果が現れない場合は、KW調査や競合調査を再度行って構成から見直すことや、テーマ、ターゲットなど見直しなども検討してみましょう。コンテンツの情報が古い場合は、更新し直した、常に最新情報を取り入れるなどすることが必要です。
まとめ
今回は、BtoBだからこそ始めるべき理由や、コンテンツマーケティングで陥りやすい失敗からその改善策について、詳しくご紹介いたしました。ソーシャルメディアが発達した今だからこそ、誰もが手っ取り早く始められるコンテンツマーケティングですが、短期での効果は見込めないため、失敗に陥りやすいマーケティング手法でも有るとよく理解できたのではないでしょうか。
ただやみくもに始めるのではなく、コンテンツマーケティングを始める理由や目標、ターゲット、どのようなコンテンツを提供するかなど、事前準備が大切になってきます。「コンテンツマーケティングとは」の記事をしっかり確認して、ぜひコンテンツマーケティングを自社でも取り入れてみてください。
Strhではコンテンツマーケティングはもちろん、マーケティング戦略の策定から実行支援を実績をもったコンサルタントが一貫してご支援しております。些細なことでも問題ありませんのでお気軽にお問い合わせフォームからのご相談をお待ちしております。
執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀
大学卒業後、株式会社TBI JAPANに入社。株式会社Paykeに取締役として出向し訪日旅行者向けモバイルアプリ及び製造小売り向けSaaSプロダクトの立ち上げを行う。
アクセンチュア株式会社では大手メディア・総合人材企業のセールス・マーケティング領域の戦略策定や業務改革、SFA・MAツール等の導入及び活用支援業務に従事。
株式会社Paykeに再入社し約10億円の資金調達を行いビジネスサイドを管掌した後、Strh株式会社を設立し代表取締役に就任。
▼保有資格
Salesforce認定アドミニストレーター
Salesforce認定Pardotスペシャリスト
Salesforce認定Pardotコンサルタント
Salesforce認定Sales Cloudコンサルタント