顧客インサイトとは?分析方法や見つける際のポイント、成功事例を解説!

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顧客インサイトとは?分析方法や見つける際のポイント、成功事例を解説!

この記事でわかること

  • そのそも顧客インサイトとは何か?顧客インサイトとニーズの違い
  • ビジネスにおいて顧客インサイトがなぜ重要なのか
  • 顧客インサイトの具体的な調査方法と他社事例

執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀

 

顧客インサイトとは顧客の潜在的な欲求のことです。顧客自身も自覚のないインサイトを企業が明らかにすることで、顧客の痒い所に手が届くような商品やサービスを提供することができます。マーケティング活動をおこなう上で重要な要素のひとつですので、成功事例も併せてぜひ参考にしてみてください。

1.顧客インサイトとは?

インサイト(Insight)とは、「洞察・発見・見通し」などの意味があり、マーケティングにおける顧客インサイトとは「顧客の本質的な欲求」や「深層心理にある本音・動機」のことを指します。

顧客の本質的な欲求は、顧客自身も認識できていないことがほとんどです。なぜならば、顧客は常に自覚している欲求に基づいて行動しているとは限らないからです。商品やサービスを選択する背景には無意識の動機が隠されている場合があるのです。

例えば、「たまたま気になったから」「理由はないけどなんとなく欲しいと思ったから」などというような曖昧な購入理由でも、自身が自覚していない無意識の欲求が行動のスイッチとなっている可能性があるのです。このような無意識の欲求や本音に着目した概念がインサイトです。なお、呼称に明確な定義はないため、「顧客インサイト」のほかにも「ユーザーインサイト」「消費者インサイト」「ターゲットインサイト」などと呼ばれることもあります。

2.顧客インサイトとニーズの違い

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前章で顧客インサイトの意味を解説しましたが、顧客インサイトとよく混同されがちなのが「ニーズ」という言葉です。ニーズは「潜在ニーズ」と「顕在ニーズ」2種類に分類されますが、大きな違いは欲求(=ニーズ)はあるものの、自身が自覚しているか無意識なのかという部分です。

潜在ニーズは自身が欲しい商品やサービスを自覚しているのに対し、顕在ニーズは欲求はあるものの、自身が明確な悩みに気づいていない状態を指します。顕在ニーズと比べて表面的ではないため、この潜在ニーズを導き出すのも容易ではありません。

では、前章で解説した「顧客インサイト」と「潜在ニーズ」はどう区別するのでしょうか?

本人が自覚していないという点ではインサイトと類似していますが、潜在ニーズは本人に質問を投げかけることで顕在化できることが殆どです。これに対してインサイトは、潜在ニーズより深い領域に隠されており、簡単なヒアリング程度で顕在化することは困難です。潜在ニーズのさらに深層にある言語化できていない本音や心理のことを指すため、把握するにはさらに深堀りする必要があるのです。

3.顧客インサイトはなぜ重要なのか

ここまでで顧客インサイトの定義についてはご理解いただけたかと思いますが、ではなぜ顧客インサイトを追及することに意味があるのでしょうか。その重要性について項目に分けて説明します。

新たな需要を満たす商品・サービスの開発に繋がる

顧客インサイトを追及するということは、表立って見えない顧客の奥にある欲求を指すため、新たな需要を満たす商品・サービスの開発に繋がるきっかけとなります。つまり、かつて存在しない新たな市場を開拓することに繋がります。もちろん新たな市場だけではなく、既存の商品・サービスの戦略の見直しや改善の材料としても活用することが可能です。

他社との差別化に繋がる

顧客インサイトを追及して得たヒントは他商品やサービスとの差別化するにあたって大いに役立つといえます。顧客インサイトは顕在化していないため、競合他社も含めて、他の企業も把握しきれていない顧客の本音であることが多くあります。そのような顧客インサイトを発見できると、顧客が真に求めているような商品やサービスをダイレクトに提供することが出来るようになり、結果的に他社との差別化につながります。

顧客の潜在ニーズに気づくことができる

顧客インサイトの追及は、顧客自身でさえ気づいていなかったニーズを発掘できます。そしてそれに基づいて創出された商品やサービスは、顧客が想像もし得なかった期待を超えるような価値を提供することができると言えるのです。実際に、顧客インサイトから得たニーズをカタチにすることで、かつてない斬新なサービスが世に次々と生み出されているのです。

4.顧客インサイトの分析方法

ここまで顧客インサイトの内容から重要性についてはお分かりいただけたかと思いますが、この章では実際に顧客インサイトの調査方法の一連の流れを、3つのステップにわけてご紹介します。

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1.データを収集する

まずは顧客の声を集めることから始めます。データの収集方法は下記のような手法が挙げられます。

①アンケート・インタビュー

顧客の声をダイレクトに聞ける方法として、アンケートやインタビューが挙げられます。

あらかじめ用意した設問に回答してもらう流れなので、効率的に回答を得ることができます。しかし、これらは顕在ニーズの把握には役立ちますが、顧客インサイトは把握しにくいでしょう。また、事前にネガティブな仮説を想定した上での問いかけを用意しておかないと、こちらが求めているような有益なデータを集めにくい可能性は高いでしょう。

参照:【ユーザーインタビュー設計方法】インタビューの目的や進め方のコツまで解説!

②ソーシャルリスニング

インターネットの普及によりソーシャルリスニングという、SNS上から顧客の声を集める方法もあります。商品やサービスについての口コミや、満足したポイントや不満点などを投稿している人もいるので、幅広い意見を集めることができます。SNSでは、アンケートやインタビューなどでは発見しづらい意見もリアルタイムに収集できるため、常に新しい意見を拾い上げられることもメリットと言えます。

2.データを分析する

分析フェーズでは定量データ(=数値化が可能)と定性データ(=数値化しづらい抽象的なもの)の相互分析が必要になります。例えばインタビューなどの定性データを先に分析する場合は、インタビュー情報をもとに傾向が見えないか分析することが大切です。

定性データを万遍なく分析するだけでなく、インタビュー対象者の属性を分けるなどして何か特定の対象者セグメントに共通ポイントがないかなど追及していくと傾向が見えることがあります。ここでペルソナを設定しておくことも有効な手段と言えます。

ペルソナとは、「架空の人物設定・モデル」のことで、ターゲットとなる人物像をより深く設定することをペルソナ設定といいます。例えば、名前や性別、家族構成から職業、趣味といった具体的な項目を設定し、イメージに落とし込みます。ペルソナ設定をすることで、開発やマーケティングなどに関わる全員がイメージを共有できます。イメージを共有できれば、それぞれの段階で顧客視点に立った施策の立案も可能です。

参照:【DLできるテンプレート公開】ペルソナとは?作り方の5つのステップや具体的な活用方法を解説

これらで分類されたデータは定量データで補完し、統合的に分析することが有効です。どのような調査を行ったとしても、調査で得た情報をもとに、仮説が立証されているのか、または何か傾向や新しい気づきがないか注視してみることが重要です。

3.分析したデータから顧客インサイトを発掘する

上記で分析したデータ結果から、その行動や感情に至った動機や原因は何なのかを探ることが最後のステップです。消費者が何か行動を起こす際には、自分自身も認識しきれていない本音が存在します。インタビューなどで確認できるのはあくまで表層的な行動の部分のみであり、深層の本音部分が消費者から語られることは少ないです。

また、実際の行動と矛盾する回答も寄せられるかもしれません。この、消費者が語らない本音を分析結果から導き出すのが顧客インサイトを見つけるということです。深層にある顧客インサイトの仮説が構築できたら、消費者にその考えを再度仮説として調査したり、顧客データと掛け合わせて分析することで、より良い顧客インサイトの仮説へと昇華することが出来ます。

顧客インサイトを把握するには、固定概念にとらわれず柔軟な視点を持つことが重要です。また、ネガティブな視点を、ポジティブ視点に変換させることも重要です。顧客から収集するデータは現象を語るケースが多く、ネガティブな意見に偏る場合もあります。しかし、ネガティブな意見も視点を変えれば、ポジティブに移行できます。ネガティブな要素をポジティブな要素として売り出す方法もあるため、柔軟な視点で物事を捉えましょう。

5.顧客インサイトの他社事例

ここでは、顧客インサイトを実際に活用して成功した事例を3つ紹介します。

Apple

ご存じの方も多いかもしれませんが、iPhoneの登場により「ガラケーからスマホへ移行」した事例をご紹介します。ガラケーが普及した後、多くの携帯電話の製造メーカーが取り組んでいた企業努力と言えば「通信環境の改良」や「音声が良い」など既存である内容の品質改良が殆どでした。

消費者の中には、目新しさを求めて携帯電話を機種変更しても前と違いがさほど分からないという感覚を持った方もいるはずです。実際に、携帯電話の機種変更の理由の多くは「今まで使っていた機種よりスペックが良くなったから」ではなく「契約期間更新のタイミング」や「使っていたものが故障した」などの消極的理由であることもあったでしょう。

しかし、そんな状況の中2007年にAppleからiPhoneが発売されたことでスマホへの移行が進み、今やスマートフォンは生活必需品といっても過言ではないほど普及しています。iPhone登場後のスマートフォン普及により、それまでただの連絡手段でしかなかった携帯電話が一転して、新たな生活ツールとして定着しました。Apple創業者のスティーブ・ジョブズは「電話機をもう一度再発明する」と語っており、ここに隠された顧客インサイトは「今までのガラケーとはまったく違ったイノベーションを求めていた」と考えられます。

日清食品

日清食品では、健康を気遣う高齢層向けに、美味しいカップヌードルを販売スタートし、7ヶ月で1400万食のヒット商品を生み出しました。これは「シニア世代も美味しければカップヌードルだって食べる」というインサイトの発見が元になっています。

シニア世代の購入層が低迷しているという課題に対し、食事面に気を遣う一方で「自由に好きなものを食べている」層が多いアクティブシニアに注目しました。そこで健康に配慮しつつも豪華で贅沢な味を実現し、低迷してきた購入層を増やすことに成功しました。

大戸屋ホールディングス

「大戸屋ごはん処」は男性がたくさん食べるための場所というイメージが強く、女性の集客がしづらいという課題がありました。そこで「1人での外食が苦手」という女性の心情に着目しました。その結果、「1人で店に入るところをみられたくない」というインサイトがみつかり、それから2階以上や地下など人目につきにくい場所に店舗を構えました。この結果多くの女性客の集客につながっています。

マクドナルド

マクドナルドがアンケート調査でどんな商品が欲しいか情報収集をした時に、「低カロリー」「ヘルシー」「オーガニック」などという要望が多かったため、2006年に「サラダマック」を販売し始めましたが、売上がさほど伸びませんでした。これに反して、その後に販売した「メガマック」や「クォーターパウンダー」などの肉肉しい新メニューが大ヒットに繋がりました。これが意味するのは「顧客が言っていること(=表面的なニーズ)と実際の消費行動(=顧客インサイト)はまったく違った」ということです。顧客の表面的なニーズは「ヘルシー志向」でしたが、実際に結果として出た売上から見えてくるニーズは「もっと肉が食べたい(ヘルシーではないものでも食べたい)!」だったことが実証されました。

Dove

Doveのリアル・ビューティー・キャンペーンでは、従来の美女を用いた広告から「みんな違っていい」ということを表現した広告を打ち出しました。きっかけとなったのは「自分のことを美しいと思うか」というリサーチにおいて、世界規模でみても「そう思う」と答えた女性は2%しかおらず、日本にいたっては0%だと明らかになったためです。そこから「みんな違っていい」ということを表現した広告を打ち出し、目にした人に「こう言って欲しかったんだ」という気づきを与え、大きな話題を呼びました。Doveは世界規模で商品を手掛けるブランドであり、世界共通の隠れた心理を見つけ出していることも、このキャンペーンの特徴といえます。

P&G

米国の大手日用品メーカーP&G社の消臭スプレー「ファブリーズ」は、「日常の嫌なニオイを消す」というコンセプトで発売されました。しかし、売上が伸び悩んだためユーザー調査やインタビュー調査を実施したところ、ヘビーユーザーの使用実態から「掃除を終えた自分へのご褒美として非日常感のある香りを楽しみたい」というインサイトを発見しました。

そこで、コンセプトを「掃除を終えたご褒美」や「日常にフレッシュな香りを加える」に変更した結果、2ヶ月で売上が倍増し、その後の大ヒットにつながりました。

6.まとめ

顧客インサイトとは表面的には見えない消費者の本音であり、自身も気づいていないインサイトに対して提案する商品やサービスは、消費者にとって大きな価値を提供することができます。

Strhでは、顧客データの収集・蓄積から分析によりカスタマーインサイトを導くご支援をさせていただいております。顧客インサイトを利用したマーケティングの活用においてお困りごとがありましたら、お問い合わせフォームより、お気軽にご相談ください。

 

執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀

大学卒業後、株式会社TBI JAPANに入社。株式会社Paykeに取締役として出向し訪日旅行者向けモバイルアプリ及び製造小売り向けSaaSプロダクトの立ち上げを行う。
アクセンチュア株式会社では大手メディア・総合人材企業のセールス・マーケティング領域の戦略策定や業務改革、SFA・MAツール等の導入及び活用支援業務に従事。
株式会社Paykeに再入社し約10億円の資金調達を行いビジネスサイドを管掌した後、Strh株式会社を設立し代表取締役に就任。

▼保有資格
Salesforce認定アドミニストレーター
Salesforce認定Pardotスペシャリスト
Salesforce認定Pardotコンサルタント
Salesforce認定Sales Cloudコンサルタント

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