カスタマージャーニー作成の教科書【テンプレート無料公開】

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カスタマージャーニー作成の教科書【テンプレート無料公開】

この記事でわかること

  • カスタマージャーニーとは何か
  • カスタマージャーニーの具体的な作成&活用方法とポイント
  • カスタマージャーニーの作成事例

執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀

マーケティング業務に携わったことのあることなら誰でも一度は聞いたことがある「カスタマージャーニー」。聞いたことはあるけど、よくわからない。カスタマージャーニーの作成方法が具体的に分からないなどと思われた方も多いと思います。

本記事ではカスタマージャーニーについてその概念や作成方法について具体的に解説します。ご担当者様が実際の現場で活用していただくために、テンプレートも公開しておりますので、是非ご活用ください。

カスタマージャーニーとは?

カスタマージャーニーとは、顧客がある商品やサービスを利用する過程や経験の道のりや態度変容の全容をまとめたもので、直訳すると「顧客の旅」になり、カスタマージャーニーマップとも呼称されます。

マーケティング担当者は自社の想定顧客(ペルソナ)の購買行動を見える化し、顧客とのタッチポイントや各タッチポイントでのコミュニケーションを整理することで、適切なタイミングかつ適切なチャネルでコミュニケーションを取ることが可能になります。

■カスタマージャーニーの例

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しかし、カスタマージャーニーは適切な手順と作成方法で進めないと絵にかいた餅になり、現場で活用されずに終わってしまうなんてこともよくあるため、本章以降でカスタマージャーニーの目的や作成方法、作成にあたってのポイントを押さえていきましょう。

カスタマージャーニーを作る目的

それではまずなぜカスタマージャーニーを作成する必要があるのか、カスタマージャーニー作成の目的を改めて整理します。

1.自社顧客の購買行動を深く理解できる

皆さまは普段からどの程度、自社顧客の購買行動を考えていますか?また各自が考えている顧客の購買行動はマーケティング活動に関わるメンバーと共通化されていますか?

残念ながら顧客の購買行動を共通認識として持たれている企業は多くはないと考えています。また、担当者が購買行動を考えるにあたってもwebサイトのアクセスデータやCRMデータ、営業からの定性情報などの情報を網羅的に把握し、顧客の購買行動全体を把握するのは大変難しいものです。

カスタマージャーニーを作成するにあたっては、その作成プロセスやアウトプットも含めて自社の顧客がどのような心理・行動変容を伴う購買プロセスで、自社の商品やサービスを購入・導入しているかを時系列でひとつのストーリーとして整理し可視化するため、マーケティング活動に関わる方は顧客の購買行動を深く理解できるようになります。

2.関係者でコンセンサスが取れマーケティング活動の意思決定が早くなる

カスタマージャーニーを作成するプロセスで重要なのは、マーケティング部門だけで完結させないことです。顧客に関わる部署、例えば営業部門やカスタマーサービス部門、カスタマーサクセス部門、開発部門など複数の部門の担当者を交えて、顧客の購買行動の解像度を上げる必要があります。

このプロセスを通して、全社として自社顧客の購買行動を共通認識としてもつことで、カスタマージャーニーをベースに導き出された施策などマーケティング活動の意思決定が早くなり、かつ部署間の施策調整などもスムーズに行うことができます。

3.顧客目線で施策を検討できる

カスタマージャーニーを検討する際はあくまで「顧客」を主語として検討を進めます。そうすることで徹底的に顧客目線に立ち、顧客に寄り添ったマーケティング施策・コミュニケーションの検討を行うことができます。

一方で、「顧客」の視点を失うと、企業都合の施策や顧客にとって不要なコミュニケーションを取ることに繋がったり、無意識の制約により、顧客に対して本来届けるべきコミュニケーションが取れなかったりすることになります。

テンプレート付!カスタマージャーニーの具体的な作成方法

ここからは実際にカスタマージャーニーを作成方法を紹介します。本記事の冒頭で紹介したストラのカスタマージャーニーテンプレートには構成と記入例を記載しています。

カスタマージャーニーを検討するベースになる、「ペルソナ」の検討テンプレートとペルソナ検討の前に検討しておきたい、「重点セグメント検討テンプレート」も一緒に活用してみてください。

カスタマージャーニーの作成にあたっては、作成前に以下のようなステップで、「重点セグメントの設定」と「ペルソナの検討」を行います。

それぞれの詳細については、ペルソナ作成方法の記事にて解説しておりますので合わせてご覧ください。

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カスタマージャーニーの作成は以下の7ステップで進めます。

1.重点セグメントの設定

2.重点セグメントに基づいたペルソナの検討

3.カスタマージャーニーのスタートとゴールの検討

4.ペルソナの「行動」の洗い出しとフェーズ分け

5.「行動」を起こす際のマインドの洗い出し

6.顧客が求める情報の整理

7.顧客接点(チャネル)の検討

1.重点セグメントの設定

自社の事業戦略に基づいて、今後重点的に狙っていきたいターゲットセグメントの設定を行います。重点セグメントを設定するにあたっては、マーケティング部門だけではなく経営陣や経営企画部門や営業部門など関係部門とも協力して設定しましょう。

ここで設定された重点セグメントがペルソナ設計の基本素材となりますので、重要なパートになります。

このステップを飛ばしてペルソナの検討から入ってしまうと、近視眼的に「今」獲得できている顧客像をペルソナに選定し、事業戦略と適合したターゲットセグメントから逸脱したペルソナの設計を行ってしまうリスクがあります。

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2.重点セグメントに基づいたペルソナの検討

重点セグメントが設定・確認出来たら、次に設定した重点セグメントに基づいてペルソナの検討を行います。

ペルソナとは自社の商品やサービスの典型的なユーザー像のことを指します。例えば、ペルソナの要素としてBtoBビジネスであれば「業種」や「役職」「所属部署」「年代」「ミッション」「課題」などがあり、これらを組み合わせてどのような人物かを可視化していきます。

ペルソナを検討するにあたっては数種類のペルソナが出てくることがほとんどだと思います。特にBtoBの場合は購買に関わる方が複数いるので当然数種類のペルソナが出てくることになります。

ペルソナを複数用意することは全く問題ありませんが、ポイントとしてはペルソナに優先順をつけることです。なぜなら、ペルソナごとに購買行動は異なりその分カスタマージャーニーを検討し、それらを実際の現場で運用すると考えるとこれは現実的ではありません。

上記からまず、重点セグメントを代表するペルソナを1つ作成しカスタマージャーニーの検討に進む形でも問題ないと思います。

また、ペルソナの精度についても最初から満点を目指して時間を必要以上にかけるのではなく、運用のなかで営業部門やカスタマーサポート・サクセス部門からのフィードバックを踏まえて、ブラッシュアップしていく前提に立つというのもポイントの1つです。

3.カスタマージャーニーのスタートとゴールの検討

いよいよ、カスタマージャーニーの作成に進みます。まずは、カスタマージャーニーのスタート地点とゴール地点を明確にしましょう。

スタート=顧客の最初の状態

ゴール=目指すべき状態

 

 

また、スタートからゴールまでの期間も設定しておきましょう。

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4.ペルソナの「行動」の洗い出しとフェーズ分け

まずはペルソナのスタート地点とゴール地点の顧客行動を書きだして、スタートからゴールまでのプロセスとして、ペルソナがどのような行動を起こすのかを洗い出します。

ポイントとしては初めから時系列に整理して書く必要はなく、まずは思いつくままスタートからゴールの間の購買行動を洗い出したうえで、時系列に並び替えながら整理していきましょう。

スタートからゴールまでの購買行動が洗い出せたら、次にそれらの購買行動をステージに分類していきます。

同類の行動はグルーピングしながらステージを検討しましょう。

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ステージを検討する際のポイントとしては、大きなステージの流れを把握して、欠けているステージがないかを確認しながら進めることです。

5.「行動」を起こす際のマインドの洗い出し

次にペルソナが各ステージで顧客行動を起こす背景として、何を感じて、どんな課題を抱えてどのようなことを考えているのかにフォーカスしてマインドを洗い出しましょう。

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ネガティブなマインドだけではなく、顧客行動の裏にある心理や感情、考えをフラットに考えることがポイントです。

6.顧客が求める情報と提供する情報の整理

ペルソナの各ステージにおける行動やその裏にあるマインドを整理できたら、それら情報を基に顧客が各ステージにおいてどのような情報を求めているのかを検討しましょう。

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顧客がどのような情報を求めているのかについては、徹底的に洗い出すことを心がけてください。

顧客の求めている情報を整理した上で、企業として顧客に対して提供する情報やコンテンツを検討しましょう。

どのような情報を提供すればペルソナは自然な流れで次のステージに移行できるかを念頭に、提供すべき情報やコンテンツを整理します。

7.顧客接点(チャネル)の検討

これまで整理したカスタマージャーニーを基に、各ステージでの顧客と接点を持つチャネルを整理しましょう。

各ステージでの顧客行動を考えるとどのチャネルからコミュニケーションするのが自然で違和感がないかを検討します。ここでのポイントは、「今」行っている施策や運用しているチャネルに縛られずに考えることです。

あくまで主語は顧客に置いた時にどのチャネルからコミュニケーションするのが適切なのかを考えましょう。

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ここまで検討したらカスタマージャーニーは完成になります。

完成したカスタマージャーニーをもう一度眺めて、不足しているステージや顧客行動、情報はないか、ステージ間に不自然な流れはないかなどを関係者で確認しましょう。

カスタマージャーニーの活用方法

具体的な活用方法をイメージいただくために、作成したカスタマージャーニーをどのような場面で活用できるのかについて解説します。

マーケティングオートメーションでのリードステージ管理とシナリオ配信

マーケティングオートメーションからメール配信を行う際に、同じ内容のメールを顧客全員に一斉配信していませんか?

カスタマージャーニーで検討してきたように、顧客と一口にいってもステージも違えば行動・マインドも異なります。したがって重要なことは顧客の検討ステージに合わせて適切な情報を適切なタイミングで届けることです。

そのためにカスタマージャーニーを作成し、ステージやステージごとに求める情報を把握しておく必要があります。

また、マーケティングオートメーションを使えば顧客の検討ステージも、スコアリングやアクティビティ結果から管理することができるため、作成したカスタマージャーニーに則って顧客ごとに検討ステージを進めるための見込み客管理及びシナリオ配信を行うことができます。

Account Engagement(旧 Pardot)でのシナリオ作成機能である「Engagement Studio」についてはこちらで詳しく解説しておりますので是非ご覧ください。

コンテンツマーケティング

コンテンツマーケティングにおいてもカスタマージャーニーは活用できます。例えば、コンテンツマーケティングを行うにあたって、やみくもにコンテンツを制作しても当然高い効果は見込めません。

コンテンツマーケティングでは「誰に対して」「どのようなコンテンツを」「どのように届けるか」がとても重要であり、これこそまさにカスタマージャーニーで検討した内容です。

顧客の検討ステージごとの求める情報がカスタマージャーニーによって整理されていれば、どのステージの顧客に対してどのようなコンテンツを制作して、どのチャネルで届けるべきかが明確になるので、効果的なコンテンツマーケティングを行うことができるでしょう。

コンテンツマーケティングについて詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

カスタマージャーニー作成にあたってのポイント

1.主語は「顧客」

本記事でも何度か登場していますが、キーワードは【主語を顧客に】です。よくある失敗例としては、カスタマージャーニーが担当者の「思い込み」「願望」でしかないことです。定性情報に加えて定量情報も踏まえ、他部門の意見も取り入れながら情報を整理しましょう。

2.マーケ以外の部門も巻き込んで検討する

カスタマージャーニーはマーケティング部門が主導して作成するケースが多いですが、顧客に関わる部門はマーケティング部門だけではありません。営業部門やプロダクト部門、カスタマーサポート部門など顧客に関わる部門の担当者の視点も取り入れながらコンセンサスを取りながら進めましょう。

特にカスタマージャーニーのステージ後半は営業部門やカスタマーサポート・サクセス部門が担うステージも含まれることもあります。カスタマージャーニーの一連のプロセスに違和感はないか、顧客像はズレていないかを確認しながら進めることはとても重要なポイントです。

3.検討にあたっては質より量とスピード

カスタマージャーニーの検討は、掛けようと思うといくらでも時間が掛けられるものです。ただし、カスタマージャーニーの作成自体は目的ではありません。質の高いカスタマージャーニーを検討しようと長い時間かけて、数カ月も施策が実行できないなどの事態にならないように注意しましょう。

また、意見を掛け合わせることでより良い打ち手の検討に繋がるので、カスタマージャーニー作成にあたっては、時間をかけて質の高い意見を少量出すより、短時間で量を出すというスタンスもポイントです。

4.検討のプロセスに否定はなし

最初から正解を出す必要はなく、運用を行うなかでブラッシュアップしていく前提に立つことも心がけましょう。現実的な制約はまずは取り除いて役職や立場関係なく自由で建設的な意見を出すことが重要です。

カスタマージャーニー作成事例

実際に企業がどのようなカスタマージャーニーを作成しているか事例をご紹介します。

三井住友銀行

三井住友銀行は、企業全体で一貫性を持った「価値ある体験」を提供するため、カスタマージャーニーマップを統合的に管理・運用する手法である「CJMM(カスタマージャーニーマップマネジメント)」を実践しています。

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特徴としては、最上流に「ビジョン」があって、その下にビジョンを実現するための「コンセプト」、コンセプトを事業全体で実行するための「ビジネスジャーニーマップ」、そして個々のプロジェクトの「カスタマージャーニーマップ」といった形で構成されており、SMBC デザインチームは「カスタマージャニーマップ」を、さらに細分化してUXフロー図を作成し運用しているとのことです。

リコー

OA機器大手リコーでは、自社のオウンドメディアのなかで、BtoBマーケティングに役立つコラムを公開しており、カスタマージャーニーマップの事例を掲載しています。

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シンプルなカスタマージャーニーですが、特徴としては「顧客に提供する体験」を各ステージ・役割別に定義していることです。

各ステージで登場する窓口担当者を明確に把握し、各ステージ、各担当者ごとに届けるコミュニケーションと体験を定義しアプローチすることの大切さを理解できる事例です。

Spotify

世界中で音楽のストリーミングサービスを展開するSpotufyでは、顧客の音楽共有体験を向上させることを目的にカスタマージャーニーマップを作成しています。

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このカスタマージャーニーの特徴は、ユーザーがモバイルからSpotifyを開いた時から友人が共有した曲を気に入るかどうかに至るまでのユーザーエクスペリエンスがマップされていて、各ステージでのユーザーの心情変化を詳細に検討することで、ユーザーエンゲージメントの主要領域を特定し、それらの領域においてユーザーエクスペリエンスを可能な限り楽しいものとするという目標を明確に持っていることです。

 

スターバックスコーヒー

日本でも大人気のコーヒーショップ、スターバックスコーヒーでもカスタマージャーニーが作成されています。

Little Springs Design社のデザイナーが作成したこのカスタマージャーニーには、入店から退店までの一連のプロセスがエリックというペルソナの行動・感情と共に整理されています。満足度を高める体験と、満足度を下げる体験が整理されている点が特徴です。

出典:Starbucks Experience Map

まとめ

ここまでカスタマージャーニーの目的や具体的な作成方法や活用方法などを紹介しました。カスタマージャーニーは作ったら終わりではなくそこからスタートです。施策を実行して、有効なコンテンツやチャネルが見つかったら追加し、営業からのフィードバックを受けて顧客行動を修正し、それを繰り返すことでより良いカスタマージャーニーが完成します。

本日解説した内容も参考に是非ストラのカスタマージャーニーテンプレートを活用して、カスタマージャーニーの作成を行ってみてください。

ストラではカスタマージャーニーの作成支援はもちろん、マーケティング戦略の策定から実行支援まで一貫して実績をもったコンサルタントが支援しています。

マーケティング活動においてお困りごとがありましたら、お問合せフォームより、お気軽にご相談ください。

執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀

大学卒業後、株式会社TBI JAPANに入社。株式会社Paykeに取締役として出向し訪日旅行者向けモバイルアプリ及び製造小売り向けSaaSプロダクトの立ち上げを行う。
アクセンチュア株式会社では大手メディア・総合人材企業のセールス・マーケティング領域の戦略策定や業務改革、SFA・MAツール等の導入及び活用支援業務に従事。
株式会社Paykeに再入社し約10億円の資金調達を行いビジネスサイドを管掌した後、Strh株式会社を設立し代表取締役に就任。

▼保有資格
Salesforce認定アドミニストレーター
Salesforce認定Pardotスペシャリスト
Salesforce認定Pardotコンサルタント
Salesforce認定Sales Cloudコンサルタント

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