Salesforce Data Cloudとは?基本知識や主要機能、導入メリットについて徹底紹介
この記事でわかること
- Data Cloudが必要になった背景
- Data Cloudの機能やメリット
- Data Cloudのエディションと無償で利用できるライセンス
執筆者 取締役 / CTO 内山文裕
Salesforce社から新たに提供されたSalesforce Data Cloudというサービスをご存じでしょうか?
業務に様々なテクノロジーが活用されるようになった昨今では、各システムやアプリから様々なデータが膨大に日々収集されています。
企業としてはそれらの大量のデータを、顧客分析やサービス・商品の改善に活かしたいところですが、「データがシステム毎に点在していてまとめた分析ができない」「どこに何のデータがあるのか分からず、分析できるかも分からない」といったお悩みを抱えている企業も多いのではないでしょうか。
Salesforce Data Cloudでは、さまざまなシステムからリアルタイムでデータを取り込み、AIや高度な分析ツールを使用することで前述のような課題に対する解決策を提示してくれます。
本記事では、Salesforce Data Cloudの基礎や機能、導入メリットを紹介して、皆さまのビジネスにどのような影響をもたらすのかを考えるきっかけをご提供できればと思います。
参照:Salesforce(セールスフォース)とは?製品群や機能、メリット・デメリットを簡単に解説!
目次
Salesforce Data Cloudとは?
Salesforce Data Cloudは、Salesforceの内部と外部のデータを統合、管理し、分析するためのCDP(カスタマーデータプラットフォーム)です。意訳すると”顧客に関するデータを一元管理するための基盤”となり、その名の通り様々な顧客分析を行うための基盤となります。
例えば、Sales Cloudにて保持している営業データやService Cloudにて管理している顧客情報、Marketing Cloudにて配信したメールの開封・クリックのデータなどをData Cloud上でまとめて分析するといったことができます。
参照:Salesforce Sales Cloudとは? セールスクラウドを分かりやすく解説
参照:Service Cloudとは?機能やSales Cloudとの違い・価格体系などをわかりやすく解説
参照:マーケティングクラウドとは?Salesforce Marketing Cloudの機能や価格体系、導入時のポイントなどを徹底解説
なぜData Cloudは必要か?
Data Cloudの概要を理解したところで、なぜData Cloudを導入する必要があるのかご説明します。Data Cloudを導入することで、顧客体験の向上と効率的なデータの管理を実現できます。詳しく見ていきましょう。
効率的なデータの管理
従来、SalesforceではSales CloudやService Cloudなどの各サービス内に閉じたデータを体系的に管理し、レポートやダッシュボードを作成してデータを分析に活用していました。
それらのデータは各サービス内でしか参照することができず、サービスを跨いだ分析をするためには、一度データをダウンロードして加工するなどの作業をする必要がありました。また、この方法だとデータが新しくなる度にデータをダウンロードし直して加工し直す手間が発生してしまいます。
そこでData Cloudを使用することで、各サービスで管理されているデータをData Cloudを通して参照できるようになり、効率的にデータを管理することができます。Data Cloudを導入することでデータにリアルタイムでアクセスし、サービスを跨いだ分析が実現できるようになりました。
顧客体験の向上
上記のようにData Cloudを使用することで、サービスの壁を超えたデータ収集、分析ができるようになりました。今まで使用していたデータよりも多くのデータを効率的に収集し分析することで、顧客の理解をより深めることができます。
このように顧客理解を深めることで、今まで以上にパーソナライズされた顧客体験を提供でき、顧客満足度を向上させることが可能です。
また、収集されたデータは取得元のデータ変更に伴い定期的に更新されるため、顧客の状況や顧客が求めるもの・取り巻く環境などが変化したとしても、即座に対応することができます。変化にいち早く対応し、顧客に合わせた調整を行うことで、より顧客満足度をあげることができるでしょう。
Salesforce Data Cloudの主要機能
ここからはData Cloudを構成する主要機能を紹介します。
データストリーム
データストリームとは、Salesforce CRMはもちろん、Salesforce Marketing CloudなどのSalesforce製品群や、Amazon S3、Google Cloud Storage、Snowflakeなど様々なデータソースからデータをData Cloudに取り込むための機能です。
データストリームで取り込まれたデータは、データレイクオブジェクト(DLO)に格納され、取り込む一部の項目のデータ型の編集が可能です。
データレイクオブジェクト
データレイクオブジェクト(DLO)は 、データストリームで取り込まれたデータを書き込んで保存する場所のことを指します。
データモデリング
データレイクオブジェクトに取り込まれたデータを、データモデルオブジェクト(DMO)に自動・または手動でマッピングができます。DMOにマッピングを行うと仮想化オブジェクトが作成され、複数のデータソースから取得されたデータ間でのリレーションが作成されます。
ID解決
ID解決は異なるデータソースからのデータを連携させ、顧客データに関して統合されたシングルビューを構築するために利用します。
ID解決では、どのような条件が一致していた場合に同一顧客と見なすかを定義する「一致ルール」と、データソースの順序などを指定することができる「調整ルール」を設定することができます。ただし、統合顧客IDを発行したりするものではないという点は留意しましょう。
計算済みインサイト
計算済みインサイトは、SQLまたはビジュアルワークフローを使用して、Data Cloudで取り込み・統合・モデル化したデータ上にインサイトを構築することができます。
具体的には評価指標やディメンションを定義・計算することができ、例えばチャネル別のコンバージョンパフォーマンスを評価することや、商品評価指標を使用して、購買行動や閲覧行動を把握することができます。
Salesforce Data Cloudのエディションとライセンス
標準Salesforceエディションで利用できる
Data Cloudは以下の標準SalesforceエディションのLightning Experienceで利用することができます。
- Developer
- Enterprise
- Performance
- Unlimited
価格に関しては取り込むデータ量や行数、プロファイル統合数、クエリ使用量など様々なData Cloud内のサービス使用料によってクレジットが消費されるという課金形態なので、詳細は営業担当にお問い合わせください。
また、Metaなど広告プラットフォームで利用できるセグメントを作成することができる「広告オーディエンス」やデータスペースの追加などは、別途アドオンライセンスとして費用が発生します。
Data Cloud Provisioning(無償ライセンス)について
既にSales CloudやService CloudのEnterprise EditionまたはUnlimited Editionを使用している組織では、無償利用可能なライセンスのData Cloud Provisioningが付与されるため、すぐにData Cloudを使い始めることができます。
Data Cloud Provisioningに含まれる内容は以下の通りです。
内容 | 詳細 |
---|---|
データサービスクレジット | Enterprise Edition:250,000Unlimited Edition:2,500,000 |
データストレージ | 1TB |
DataCloudシステム管理者 | 1ユーザー |
DataCloud社内IDユーザー | 100ユーザー |
DataCloud 権限セットライセンス(PSL) | 1,000ライセンス |
インテグレーションユーザー | 5ユーザー |
Salesforce Data Cloudの導入メリット
Salesforce Data Cloudを導入することによるメリットは以下の3点が挙げられます。
- 各Salesforce製品で管理されたデータにリアルタイムアクセス
- Salesforce外部で管理しているデータにアクセス
- 生成AIを用いた高度なデータ分析
Salesforce Data Cloudに限らず、CDPを導入することによる効果は以下の記事でも紹介しているので、ぜひご一読ください。
参照:CDPとは?導入でできることやメリット・デメリットをわかりやすく解説
それでは、Salesforce Data Cloudの導入におけるメリットを1つずつ解説します。
各Salesforce製品で管理されたデータにリアルタイムアクセス
Salesforce Data Cloudは、Sales CloudやService Cloudなどの異なるデータソースから情報を収集し統合するため、データの変更や新しいデータの追加があっても、遅延することなくすぐにデータを参照できます。そのため、ユーザーは最新の情報に基づいてデータの分析や意思決定を行うことができます。
リアルタイムのデータにアクセスすることでデータドリブンな意思決定を行うことができ、ビジネスの機会を最大限に活用することが可能になります。
Salesforce外部で管理しているデータにアクセス
Salesforce Data Cloudでは、Salesforceの各種サービスはもちろん、外部アプリとも連携できます。外部アプリのデータをわざわざダウンロードせずとも、異なるデータソースから直接収集された情報を一元化して利用することができるため、より詳細な顧客データセットを構築することができます。
また、EinsteinのAIを活用した高度なデータ分析を行うことで、市場動向や顧客行動の変化にも素早く対応することができます。この統合されたデータセットを利用することで、企業は顧客のニーズと行動をより正確に予測し、適切なタイミングで適切なサービスや製品を提供する、といったことが可能になります。
生成AIを用いた高度なデータ分析
出典:Salesforce Einstein 1 Platform
Salesforce Data Cloudでは、生成AIの機能を通じて業務効率を向上させ、成長を加速できるように設計されています。Einstein Copilot(Salesforceの全てのアプリケーションに組み込まれている対話式AIアシスタント)を用いることで、文章で動作を指示することが可能です。
Einstein Copilotを使用すると、統合管理された顧客データに合わせたメール内容の自動生成や、コールセンターへの問い合わせを自動でナレッジ化することができ、より効率的にパーソナライズされた体験を提供することができます。
まとめ
本記事では、Salesforce Data Cloudについて概要からサービス登場の背景、主要機能を中心にご紹介しました。
Salesforce Data Cloudを活用することで、これまで実施できなかった・困難であった複数のデータソースにまたがったデータの統合や、データソースを横断した分析も可能になり、新たな示唆の発見にもつながりビジネス成長を加速させてくれることでしょう。
ただし、新規導入や現場での定着化・活用を推進するには一定の専門知識や経験が必要になるシーンも多いのが実際です。
StrhではSalesforce Data Cloudの導入や活用支援はもちろん、各種Salesforce製品の導入や活用支援を実績豊富なコンサルタントが支援いたします。Salesforceの活用や定着化についてお困りごとがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
執筆者 取締役 / CTO 内山文裕
青山学院大学卒業後、株式会社ユニバーサルコムピューターシステムに入社。
大手商社のB2B向けECサイトの構築にて会員登録、見積・注文機能、帳票出力などECにおける主要機能のフロント画面・バックエンドの開発に従事。 その後アクセンチュア株式会社に入社。デジタルコンサルタントとしてWebフロントエンド・モバイルアプリの開発やアーキ構築を主に、アパレル・メディア・小売など業界横断的にシステム開発を支援。また、ビッグデータを活用したマーケティング施策の策定やMAツールの導入・運用支援にも従事。
2022年2月にStrh株式会社の取締役CTOに就任。デジタルプロダクト開発の支援やMAツール導入・運用支援を行っている。
▼保有資格
Salesforce認定アドミニストレーター
Salesforce認定Java Scriptデベロッパー