【BtoB必須】デザイン思考とは?5つのプロセスやフレームワークをわかりやすく解説 !
この記事でわかること
- デザイン思考とは何か?他の思考法との違い
- デザイン思考のプロセスとフレームワーク
- デザイン思考のポイント
- デザイン思考のメリットと注意点
- デザイン思考の成功事例
執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀
「なにか良い解決策やアイデアはないかな?」
仕事で課題に直面した際、このように感じたことはありませんか?もしくは、実際に周囲に尋ねた経験がある人もいるかもしれません。なかなか新しいアイデアが思いつかないと感じた際に、是非実践してほしいのが、デザイン思考です。
デザイン思考とは、デザインファームであるIDEO社によって提唱されたビジネスフレームワークのことを指します。「デザイン思考」と聞くと、デザイナーやクリエイターのためのもので、自分とは無関係だ、と思う方もいるかもしれません。しかし昨今では、その領域のみならず、BtoBビジネスからBtoCまで、様々な場面で使われるビジネスプロセスとして重宝されています。
新しい視点や見解を元に物事を改善していきたい方、表面的ではなく潜在的なニーズに添ってアイデアを出したい方、ぜひ最後までお読みください!
目次
デザイン思考とは?
デザイン思考とは、製品やサービスの本質的な課題にアプローチするため、企業側が実際にユーザーの立場に立ち、共感を得ることで潜在的なニーズを見つける思考法のことです。
「デザイン思考」という言葉自体が誕生したのは、1987年のことです。その前にもデザインを思考法として捉える見方は始まっていたようですが、ピーター・ロウによる「デザインの思考過程」という著書により、「デザイン思考」と明記されていたことが始まりだと言われています。
その後、デザインファームであるIDEO社によって提唱され、多方面で広まっていきました。
デザイン思考と他の思考法との違い
①アート思考(アート・シンキング)
アート思考とは、自己表現の方法を見出すもので、元々は芸術家のための思考法です。日本の経営者である延岡健太郎氏は、アート思考を「アート思考とは、クリエイターのアイデア、感情、新年、哲学の表現を目的とし、限りない試行錯誤を得て自分の哲学を成し遂げようとすること」と述べているように、アート思考では、自分起点で課題に対してどのように考えているかを表現するためのものです。
【デザイン思考とここが違う】
アート思考とデザイン思考では、芸術家やクリエイターからの思考法であるという点や、感情など主観にフォーカスするという点では似ているかもしれませんが、そもそもの目的が大きく異なります。
アート思考は、自分を起点とし、自己をどのように表現することで訴えるか、といった自己表現を目的としています。一方デザイン思考では、顧客起点で、どのように顧客のニーズにアプローチするかを目的としています。
②ロジカル・シンキング
ロジカルシンキングとは、課題に対して主張と根拠を明確にし、道筋を立てて考えることで、情報を整理し、趣旨を明確にするための思考法です。
【デザイン思考とここが違う】
どちらも課題解決に向けた思考法である点に関しては類似しています。
ロジカル思考は課題や起きた事象を基に、論理的に組み立てて課題解決法を分析するのに対して、デザイン思考はユーザーの潜在的ニーズにフォーカスし、課題解決法を分析します。
③クリティカル・シンキング
批判的思考(クリティカル・シンキング)とは、「本当に正しいのか?」と前提を疑うことで、前提の事実を明らかにして、様々な方向から論理的にアプローチするための思考法です。構造的で論理的であるプロセスは論理的思考(ロジカルシンキング)とよく似ていて、セットで行われることもしばしばです。
【デザイン思考とここが違う】
どちらも課題解決に向けた思考法である点に関しては同じ部類ですが、構造的に俯瞰して課題解決法を分析するクリティカル・シンキングに対して、デザイン思考は、ユーザー視点にたち、主観的に課題解決法を分析するという点で異なります。
注目される背景
デザインファームIDEOによって提唱されたことで、広まったデザイン思考ですが、より注目されるようになった背景として、2010年以降のVUCA時代によるものだと言われています。
VUCAとは、
- volatility(変動性)
- uncertainty(不確実性)
- complexity(複雑性)
- ambiguity(曖昧性)
この4つの単語の頭文字をあわせた意味です。ニーズや変化の移り変わりが激しく、予測できない時代の流れの事を表しています。
こうしたVUCA時代に対応するために重要なポイントは5つであると考えます。
①不確実性や曖昧さを受け入れ、それを当然のものと理解すること
②すべての課題や改善は人から生まれるものだと認識し、課題改善に向けて人をよく観察し、深く共感すること
③深く共感をするために、五感を働かせて、数値化できない情報も受け入れて共感すること
④従来の見解では理解できない物事でも受け入れるために、ユーモアをもって取り組むこと
⑤五感で得た情報を組み合わせ、よくわからない物事や言動から意味や価値を見出そうとすること
以上のことから、もはや従来の仮説検証型ではVUCAの時代には追いつくことができなくなってきています。そして、もともとデザイナーのための思考法だったデザイン思考が、VUCA時代に対応することができるプロセスとして、今やビジネスシーンも含め社会で幅広く活用されるようになりました。
デザイン思考の5つのプロセスとフレームワーク
デザイン思考の5つのプロセスと活用できるフレームワークをご紹介します。
1.共感(Empathize)
デザイン思考では、ユーザーに「共感」することから始まります。
共感を得るためにはユーザーをよく観察し、モノやサービスと課題がどのように影響しているのかを理解する必要があるため、5つのプロセスの中で一番重要な工程になります。
人のニーズには、表面化されたニーズと潜在的ニーズの2つがあります。表面化されたニーズとは、すでに市場に解決策のあるニーズのこと指し、潜在的ニーズとは、まだ誰にも気づかれていないニーズの事や、すでに市場にある解決策では改善されず、満足することのできないニーズのことをいいます。
IDEO社のCEOであるティム・ブラウンが「人間の抱える基本的な問題とは、人間は不便な状況に適応するのに長けていることだ」と言及しているように、潜在的ニーズを見つけ出すことは簡単ではありません。
観察する側の主観によって、潜在的ニーズが阻害されることもあります。自分の常識や先入観で判断しないためには、客観的な視点を持とうと意識することが重要になります。
フレームワーク①:共感マップ
共感マップとは、観察対象やペルソナの言動と感情を紐付けるためにマップにして可視化するものです。そうすることで、主観を排除しやすく、客観的に観察することができます。
【用意するもの】
- 付箋紙(3色が吉)
- 模造紙(付箋を貼る広いスペース)
【使い方】
観察対象者やペルソナの言動を記録していきます。
ポイントは、付箋紙を利用して感情別に色分けした付箋に、観察した言葉・行動を書き込み貼りつける
(例)
- 青:ネガティブな感情(悲しみ/寂しさ/怒り/疲れ 等)
- 赤:ポジティブな感情(楽しさ/喜び/リラックス 等)
- 黄:どっちつかずな感情
付箋に書いた言動を、さらに4つに割り振っていきます。
- think:顧客が考えていること
- feel:顧客が感じて言えること
- say:顧客が言ったこと
- do:顧客がしたこと
そうすることで、顧客の言動における矛盾や斬新さ・意外性、意味不明などのギャップを探す事ができます。
フレームワーク② :カスタマージャーニー
カスタマージャーニーとは、顧客がモノやサービスを利用する過程を一連の流れにして可視化したマップのことです。
【カスタマージャーニーマップ作成手順】
①顧客が利用する過程をリストアップする
②時系列順に並べる
③顧客を観察し、共感マップと同じように、ポジティブ、ネガティブ、ニュートラルで色分けした付箋を使い、リストアップした顧客の旅に該当するスペースに貼っていく
④観察を行う中で、必要に応じて旅の過程を追加/削除していく
⑤共感マップと同じく、ギャップと改善点がないか検証する
カスタマージャーニーの作成方法についてはダウンロードして現場で使えるテンプレートとともにこちらの記事で詳しく解説しております。また、ジャーニーマップ作成時に欠かせないペルソナにについては、こちらの記事で詳しく解説しております。合わせてご覧ください。
・観察としてのインタビューを行う
共感プロセスにおいて重要な要素として「観察」があり、「観察」を行うにあたっては実際のユーザーに対してインタビューを行うことはとても重要なアクションです。インタビューを行う上でのポイントは、答える人の主観をうまく取り除くため、「なぜ?」や「どうして?」などを5回以上繰り返して聞き、WHYを徹底的に探ることです。そうすることにより、質問された顧客は、自分の内面を客観的に探ることができ、自分自身を観察することができます。
ユーザーインタビューの設計方法や進め方についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
1.エクストリームユーザーを観察する
- エクストリームユーザーとは、「極端な利用者」のことを指します。
- 子供
- 初心者
- 熟練者
- プロフェッショナル
- 愛好家
- アンチ
- ルールより自分の合理性を優先させる人 などがあげられます。
平均的なユーザーは、モノやサービスに不満があったとしてもそれを受け入れ、マニュアル通りに使用します。それに対してエクストリームユーザーは、マニュアル通りに使いこなすことができなかったり、独自の用途や使用方法によって、自分の使いたいように使用します。そのため、潜在的ニーズが行動に現れやすいのです。
ユーザーにインタビューを行う前に抑えておきたいポイントなど、詳しい記載はこちらから。
2.体験としての観察
実際に自分がユーザーとなり、体験することも重要なアクションです。ユーザーになって実際に体験してみることで、モノやサービスを利用する人間に共感することができます。そのため、体験している自分を観察することで、潜在的ニーズを見つけやすくなります。
2.定義(Define)
共感のプロセスで得られた情報を深掘りし、ユーザーの根本的なニーズを言語化していきます。
「〜するにはどうしたら良いか」を意識して、コンセプトを定義します。少しでも疑問点や矛盾点などが生じれば、1の共感のステップに戻り、共感マップ/カスタマージャーニー/観察インタビューなどのフレームワークを改めて掘り下げるなど、共感のプロセスとセットで行いましょう。
また、このプロセスを進めるために下記のようなフレームワークを利用して進めるのも効果的でしょう。
フレームワーク③: HMW(How Might We~?)
HMWとは、英語のHow Might We?の略で、「どうすれば」と問うことで問題をより具体的に言語化することができ、定義に役立つフレームワークです。
3.概念化/創造(ideate)
ユーザーのニーズをどう満たすか、アイディアを出し合うフェーズです。「ブレインストーミング」をして、アイデアを創造していきましょう。
ブレインストーミングとは、何人かで自由に意見を言い合い、イノベーティブなアイデアを発案していくプロセスのことです。科学者であるライナス・ポーリングも「いいアイデアを得る最良の方法は、たくさんのアイデアを得ること」と言及しているように、BSで、多様なアイデアをたくさん量を出すことが、良いアイデアを生み出すことに繋がります。
ブレインストーミングを成功させるには、以下9つのポイントを抑えましょう。
①アイデアの質より量にこだわる
質の高いアイデアかどうか判断するためにも、まずは量をたくさん出すことがブレインストーミングでは欠かせません。いいアイデアを出したいからこそ、筋の通ったアイデアや発言をしなくちゃと気を張ってしまうかもしれませんが、どんな新しいアイデアも、最初は矛盾だらけで当たり前です。質の高いアイデアを出そうとせず、ジャストアイデアでも思いついたものはどんどん共有しましょう。
②他者のアイデアをもとにして飛躍する
アイディアを出すとき、他者のアイデアを基にメンバー間で思考を連鎖させるように意識しましょう
例えば、誰かが発言したことに対して、そのアイデアをもとにひらめいたことを提示していきます。これを連鎖させ、メンバー間でアイディアを繋げていくと良いです。
③上下関係による影響を排除する
参加者が上司や先輩の顔色を伺いながら発言をするような状況では、アイデアの数も多様性も望めないので、上下関係のフラットな場所であることを保証する必要があります。
例えば、アイスブレイクを行ったり、参加者全員に威圧感のないニックネームを付けたり、キャラクターを与えることは、上下関係のみならず初対面など関係構築が浅い場合にもよく使用される方法です。
④自己防衛心を取り除く
「もし自分のアイディアが採用されたらいい結果を出さなければいけない」など、他人からの評価を恐れ、自己防衛の状態になってしまった場合、知らず知らずのうちに、自らの行動に制限をかけてしまうことになります。
ここでも、アイデアの質にこだわらないよう、アイデアの量をたくさん出した人が称賛されるようにするなど場の雰囲気づくりや進行を工夫するといいでしょう。
⑤支配欲に気をつける
会議の場となると、どうしても自分の意見を押し付けようとしてしまったり、正当化しようとする支配欲に駆られることが起こりやすいです。
★他の人のアイデアに是非を表現したいなら「I LIKE」「I WISH」を意識するとよいです。
まずアイデアに対して良いと思う点を「このアイデアの〇〇がスキ!」と述べます。そしてその後に、「もっとこうしたい、こうなったらいいな」と述べることで、甲乙つける形を提案型に変えることができます。
この方法は、⑤支配欲を抑制するだけでなく②の他者のアイデアにつなげることの促進にもつながるのでおすすめです。
⑥制限時間1時間、目標アイデア数100個
あくまで目安ではありますが、1時間で100個のアイデアが出るということは、ブレインストーミングが滞りなく順調な証拠です。
重要なことは、場の勢いや空気を止めないことです。だんだんアイデアが出てこなくなってきたり、停滞してきた場合はすぐにテーマを変えるなどして工夫しましょう。
⑦簡単なクラフトツールを用意する
頭の中ではイメージできていても、うまく言語化できず伝えられない場合も起こり得ます。そうしたときは、実際に手を動かして簡単でも形にしてみることで伝えることができ、さらに新しい発見をすることができるかもしれません。また、会議がスムーズになるなら、お菓子やドリンクも用意してフランクに行うこともOKです!
⑧どの案を採用するかは多数決
一人3票まで、などのルールを決めて参加者全員で多数決をとり、アイデアを絞り込む方法が適しています。ブレインストーミングの多数決で行われる方法が、「バタフライテスト」です。バタフライテストとは、良いと思うアイデアや投票するアイデアに自分の名前の書いた付箋を貼り付ける方法です。
⑨ブレインストーミングの進行と進行役の心がけ
- テーマ設定は、アイデアがすぐに10個出るように
難しいテーマではなく、簡単なテーマでアイデアを考えやすいものにすることで、沈黙を防ぐことができたり、会議をうまく進めることに繋がります。1つの会議に1テーマだけである必要はないので、簡単なテーマをいくつか用意するようにすると良いです。 - 場の流れを停滞させない
同じテーマでも、時間が立つとアイデアが思いつきにくくなったり、だんだん尽きてきます。そうなり始めたら、すぐに違うテーマに話題を変えるなどして、常に話し合いが盛り上がっている状態であるように、進行を心がけましょう。 - アイデアを付箋紙に書き込み、貼っていく
少し大きめの付箋に、一目で内容がわかるように要点をまとめて書き、貼っていきます。比較検討する際に動かしてまとめることができるからです。また、何個アイデアを出したか数字をふることで、みんなのモチベーションを保つこともできるかもしれません。 - 重要なルールは壁に貼る
ブレインストーミングを行う際に気をつけるルールなどを決めたら、大きめのスペースに書いて、よく目に入る壁に貼っておきましょう。最初に決めたルールが意味なかった、ということを防ぎ、随時確認することができるので、おすすめです。 - アイディアを出す人たちには、課題に対して自分事化してもらうように働きかける
「もし自分が~だったらどうするだろう?」などの質問を投げかけを行いましょう。
これらのポイントを前提条件として抑え、上下関係などなく意見しやすい環境づくりをすることができます。
4.施策(prototype)
アイデアを具体化し、実際に形にしていく工程(以降:プロトタイピング)です。
プロトタイピングを通して、最速で最善に至るためには、たくさん失敗し、何度も作り変えることが大切です。
IDEO社で実際にプロトタイピングを行う際に使われている「3つのRの原則」というものがあります。
Rough(ラフ)
ラフとは、細かいところまで精密に作るのではなく、簡単に雑に作ってみることです。1つ1つ丁寧に作りすぎないことで、安価に作ることができます。
Rapid(ラピド)
ひとつのプロトタイピングに時間をかけず、短時間で作ることを意識し、その後何度も改良していきます。
Right(ライト)
ライトとは、実現したいことを正しく表現することです。
部分部分でも実現したい側面のアイデアや方法が思いついたら、その部分に特定して何個も作ります。そうすることで、RoughやRapidにも繋がります。
5.テスト(test)
プロトタイプのフェーズで作った試作品を実際にユーザーに使ってみてもらい、ユーザーからのフィードバックを求めます。
プロトタイプのフィードバックをもらう方法として2つのプロセスあります。
①モノやサービスを試乗に小規模に投入して検証するプロセス
プロトタイピングが終盤に差し掛かったタイミングで行い、開発したモノやサービスに対して顧客の実際の反応を観察します。
そこで得た観察結果をもとにブレインストーミングを行うことで、改善案を考えてブラッシュアップしていく市場を巻き込んで行うプロトタイピングです。
②モノやサービスを市場へ導入する承認を得るプロセス
イノベーティブなモノやサービスが経営陣の承認を得ることはとても難しいです。組織は大きくなればなるほど複雑な人間関係を内包するので、様々な感情と困惑が飛び交うでしょう。組織ごとに承認を得るために独自のプロセスもあるようです。
潜在的ニーズを元に作り上げたイノベーティブなモノには、過去の前例や事例がないことが難点となっています。デザイン思考によって作られたモノやサービスを経営陣が理解して、共感してもらい、あわよくば支援者になってもらうとさらによいです。
理解・共感・支援者(ファン)の3つの要素が揃うことで、企画の実現に繋がります。
デザイン思考のポイント
デザイン思考には、3つのポイントがあります。
①人間中心
デザイン思考の工程をもちいて、人のニーズに寄り添い、人が解決し、人の経験をよりよいものにしていきます。
②多様性を活かすこと
デザイン思考では、様々な人の想像力を活かし、ユーザーに共感し、そこから潜在的ニーズを発見することで実現する解決策を想像します。
そのプロセスをたどるためには、従来の思考の枠組み(フレーム)を超え、新たな枠組みをから創造をする、リフレーミングをする必要があります。
③早く失敗して再挑戦
アプローチする形を試行錯誤し、最善の方法に向かって何度もトライアンドエラーします
デザイン思考のメリットと注意点
ここでは、具体的なメリットと注意点に関して紹介します。
メリット
①アイディア提案の習慣化
そのアイディアを実現できるかどうか問わず、できる限り広く多くアイデアを出すことができるので、失敗や反論といった恐怖や不安を感じることなく自分の意見を言えるようになる。また、デザインシンキングのプロセスを通して全員が忖度せず好きなだけアイディアを出すことができるようになることが期待できます。
②多様な意見の需要
デザイン思考を実行する上でのプロセスでは、どれもグループワークが中心になります。そのため、様々な人から意見を聞くことができるため、いつでも新しい視点からの意見にふれることができます。
③チーム力の強化
メンバー同士のコミュニケーションを重視するデザイン思考を実践することで、コミュニケーションを増やすことができます。
④イノベーションの創出
デザイン思考では、従来のような市場中心型アプローチとは違うユーザー中心設計です。ユーザーのニーズと向き合うことで、課題の本質に迫ることができるでしょう。
注意点
①ゼロベースから生み出すものには不向き
そもそもデザイン思考では、課題解決をメインとしているため、ユーザーが決まっていないなど、課題が明確でない状態からアイディアを生み出すのは向いていません。
②プロセスよりも結果を重視しすぎてしまう
顧客起点だからこそ、ユーザーからのリアクションを大事にしすぎてしまう場合もあります。ユーザーはサービスやプロダクトについてすべてを把握・認識しているわけではないという前提も持ち合わせながらワークを進めましょう。
デザイン思考の成功事例
実際にデザイン思考によって生まれた製品やサービスをご紹介します。
Apple
次々と新しい製品を発表し、世界中で人気を誇るAppleですが、中でもiPodの発明は、IDEO社が実際に携わりデザイン思考を取り入れてデザインしたことで有名であり、それもわずか11ヶ月で誕生しました。
当時の音楽業界には、SONYのウォークマンがすでに浸透していた中で、競合他社やユーザーの音楽の聴き方を改めて観察をしました。そこから、CDを購入してからデータを取り込み、端末に移行するという手順での移行作業を手間に感じていたことや、自分が選んだ曲をいつでもどこでも聞きたい、という潜在的ニーズが隠れていたことがわかりました。
「すべての曲をポケットに入れて持ち運ぶ」というコンセプトの元、iPodとPCを自動同期させるオーディオシンクの開発や、どんなに曲数があってもスクロールして選びやすい、ドーナツ型ホイールのアイデアが生まれました。そこから試作品を制作してはフィードバックを何度も重ね、2ヶ月間でおよそ100個ものプロトタイプを作成したそうです。それを経て私達に馴染みのある、あのiPodが誕生したと言われています。
Spotify
spotifyは、サブスクリプション型の音楽ストリーミングサービスです。様々なクリエイターの音楽/ラジオ/ポッドキャストなどを、幅広い分野で配信しています。なかでもSpotifyの最大の特徴はオリジナルのプレイリストを作成できることです。
自分で好きな曲を自由に組み合わせてオリジナルのプレイリストを作成し、更にそれを他の人に共有することができることは、従来の音楽配信サービスの概念を覆しました。実はこのプレイリストがデザイン思考によって生み出されたのです。「好きな曲を自分の好きなように組み合わせて聞きたい」というニーズのもと、プレイリストが誕生しました。
さらにユーザーは、ただ好きなときに好きな曲を聞いているだけではありませんでした。例えば、1週間の始まりの月曜日には、頑張れる曲を聞いて元気出したい、だとか、雨がふると何故かこの曲を聞きたくなる、といったように、その日の天気やコンディションによっても聞きたい曲のニーズが変わっていたのです。こういったユーザーニーズも拾いながら、今では多種多様なプレイリストが公開され、多くのユーザーに支持される音楽ストリーミングサービスに成長しました。
NetflixではSpotifyの成功までの道のりを描いたドキュメンタリードラマ「THE PLAYLIST」が配信されているので、ぜひ御覧ください(^o^)
まとめ
今回デザイン思考を学び、潜在的ニーズに寄り添ったアイデアの創造について理解しました。「良いアイデアとは?」「新しいアイデアを出すには?」それは天才だけが思いつくものと最初は思うかもしれません。デザイン思考を提唱したIDEO社であるトム・ケリーが、「誰もがクリエイティブだ」と言うように、この学びを実践し、経験として積み重ねていくことで、創造力を養うことはもちろん、創造することに対しての自信(クリエイティイブコンフィデンス)も持てるはずです。
Strhでは、デザイン思考のワークショップを活用したマーケティングコンサルティングや新規事業支援を始め、システム・モバイルアプリの設計開発まで幅広く支援しています。
まずはお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください!
執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀
大学卒業後、株式会社TBI JAPANに入社。株式会社Paykeに取締役として出向し訪日旅行者向けモバイルアプリ及び製造小売り向けSaaSプロダクトの立ち上げを行う。
アクセンチュア株式会社では大手メディア・総合人材企業のセールス・マーケティング領域の戦略策定や業務改革、SFA・MAツール等の導入及び活用支援業務に従事。
株式会社Paykeに再入社し約10億円の資金調達を行いビジネスサイドを管掌した後、Strh株式会社を設立し代表取締役に就任。
▼保有資格
Salesforce認定アドミニストレーター
Salesforce認定Pardotスペシャリスト
Salesforce認定Pardotコンサルタント
Salesforce認定Sales Cloudコンサルタント