マーケティングファネルとは?古いとされる理由や種類、活用方法まで解説
この記事でわかること
- マーケティングファネルとは?カスタマージャーニーとの違い
- マーケティングファネルを活用するメリット
- マーケティングファネルが古いとされている理由
- マーケティングファネルの種類
- マーケティングファネルと関連するフレームワーク
- マーケティングファネルの活用方法
執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀
マーケティングファネルという言葉を聞いたことがあるものの、正直よく分かっていないという方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、マーケティングファネルの概要やカスタマージャーニーとの違いなどを踏まえつつ、種類や活用方法まで解説していきます。またマーケティングファネルに関連したフレームワークも紹介しているので、ぜひ最後までご確認ください。
目次
1.マーケティングファネルとは
まずはマーケティングファネルの概要やカスタマージャーニーとの違いなどについて確認しましょう。
マーケティングファネルの概要
マーケティングファネルとは、マーケティングにおける各プロセスを漏斗(=ファネル)の形で表したものです。
上記のように認知から購買に至るまでのプロセスを可視化し、各プロセスにおける見込み顧客の推移を確認していく際に用いられます。
認知から購買に至るまでに逆三角形になっているのは、購買プロセスを経る度に見込み顧客がふるいにかけられ、徐々に減少していく様子を表しているのです。1920年代にサミュエル・ローランド・ホール氏が提唱した、AIDMAという顧客購買プロセスを分かりやすく可視化するために、マーケティングファネルは生み出されたと言われています。
マーケティングファネルとカスタマージャーニーの違い
マーケティングファネルと同じく、顧客の購買プロセスを表すものとして、カスタマージャーニーがあります。
カスタマージャーニーとは、認知から購買後に至るまでに顧客が辿る思考の変化や悩みなどを表したものです。マーケティングファネルと異なり、各購買プロセスにおける顧客の悩みやニーズに加えて、考えうるタッチポイントや提供すべきコンテンツなどもまとめて同じ資料内で整理します。
主に顧客推移を把握するために用いられるマーケティングファネルに対して、顧客に関する深い分析を行う際に適した資料と言えるでしょう。
参照:カスタマージャーニー作成の教科書【テンプレート無料公開】
マーケティングファネルを活用するメリット
マーケティングファネルは、購買プロセスのどこに課題があるのかを把握しやすいというメリットがあります。
カスタマージャーニーは顧客の思考やニーズの分析には役立ちますが、現在のマーケティングアプローチにおいて、どの購買プロセスに課題があるのかまでは分かりません。その点、マーケティングファネルを用いて、各購買プロセスにおける見込み顧客数を確認することで、どこに課題があるのかを整理できます。
例えば興味関心の段階から比較検討段階に移行する際、見込み顧客の数が大幅に減少しているといった状況を把握できるのです。
2.マーケティングファネルが古いと言われている理由
次にマーケティングファネルが古いと言われている理由を解説します。
理由①:消費者行動の多様化
一つ目の理由としては、消費者行動の多様化が挙げられます。
従来のマーケティングファネルは、認知から購買までのプロセスを順を追って進んでいくことを前提として作られています。AIDMAが提唱された1920年代から高度経済成長期にかけては、インターネットもないため、顧客が辿る消費行動には大きな違いが見られなかったのです。
しかし、現代ではインターネットやSNSが登場したことにより、消費者のニーズや行動も多様化しています。そのため、AIDMAを基にしたマーケティングファネルでは、消費者行動を説明できなくなってきたと言えるでしょう。
理由②:購買後の体験まで認識できない
二つ目の理由は、購買後の体験まで認識できないという点です。
マーケティングファネルとして最も有名なパーチェスファネルは、AIDMAを基にしたものであるため、認知から購買までのプロセスしか整理できません。しかし、現代では購買後の顧客行動、例えばSNSにおけるシェアや口コミ促進、ファン化といった活動も重要となります。
従来のマーケティングファネルでは、そういった購買後の体験を追跡できないのです。
マーケティングファネルは現代でも重要
とはいえ、昨今インフルエンスファネルやダブルファネルといった、購買後のプロセスにも対応しているマーケティングファネルが登場しているため、現代のマーケティングでも十分活用できます。
特に購買検討期間が長く、情報収集から購買まで順を追って進んでいきやすいBtoB領域のビジネスにおいては、マーケティングファネルの考え方に基づいて各プロセスの現状把握や分析を行うことは、現状把握や改善活動において重要な取り組みと言えるでしょう。
また、ルーピングファネルなどの新しいマーケティングファネルであれば、BtoC領域でも精度高く分析できるのです。各ファネルに関しての詳細は後ほどご紹介します。
【補足】消費者行動の種類
先ほど消費者行動の多様化について触れましたが、補足として消費者行動の種類について確認します。
ジャーニー型消費行動
ジャーニー型消費行動とは、認知から購買に至るまで、一定期間をかけて段階を踏んで進んでいく消費行動を指します。
AIDMAなどの消費者行動モデルは勿論、カスタマージャーニーやマーケティングファネルも、基本的にはジャーニー型消費行動を整理するものと言えるでしょう。購買検討期間が長い傾向にあるBtoB領域や、BtoCの中でも家や車、高級時計といった高価格帯の商品を扱う場合、ジャーニー型消費行動が中心となります。
パルス型消費行動
パルス型消費行動は、2019年にGoogleが提唱した消費行動となります。
現代ではスマートフォンやSNSを見ているうちに広告などが目に入り、突発的に購買意欲が高まり、そのまま購買する人も多いと言えるでしょう。これらの行動を、瞬間的に流れる電流を表す「パルス」にたとえて、Googleはパルス型消費と呼んだのです。
パルス型消費は高価格帯の商品やBtoB領域ではあまり見られず、比較的価格帯の低い日用品や趣味・嗜好品など、BtoC領域においてよく見られる消費行動と言えるでしょう。
3.マーケティングファネルの種類
ここからはマーケティングファネルの種類について、確認していきましょう。
パーチェスファネル
パーチェスファネルは、マーケティングファネルにおける代表格です。
パーチェスファネルでは、以下の購買プロセスを逆三角形の形で整理しています。
- 認知段階:見込み顧客が自社を認知している段階
- 興味関心段階:見込み顧客が自社製品・サービスに興味を抱いている段階
- 比較検討段階:見込み顧客が自社製品・サービスの利用を検討している段階
- 購買段階:自社製品・サービスを購入した段階
各段階において、マーケティング施策で獲得した見込み顧客数などを当てはめることで、マーケティングプロセスの現状を把握することができます。その上で、どのプロセスで見込み顧客が離脱しているのかを把握し、離脱を防ぐための対応策を検討していくことになります。
先述のとおりAIDMAを基に作られていますが、その他の購買行動モデルを当てはめることも可能です。
インフルエンスファネル
続いてご紹介するのはインフルエンスファネルです。
インフルエンスファネルは、パーチェスファネルとは異なり、購買後の顧客行動を整理するためのマーティングファネルとなっています。主に以下のプロセスを表すことになるでしょう。
- 継続段階:製品・サービスが気に入り、リピート利用している段階
- 紹介段階:友人や同僚に対して、自社製品・サービスを勧めてくれる段階
- 発信段階:SNSなどを用いて、自社製品・サービスを口コミしてくれる段階
現代のマーケティングにおいては、既存顧客へのマーケティング活動も重視されています。
しかしパーチェスファネルによる分析だけでは、既存顧客の状態を把握することができません。
そこで生み出されたのがこのインフルエンスファネルです。インフルエンスファネルでは、プロセスの遷移数を把握することで、「製品・サービスに満足してもらえているのか、顧客をファン化できているのか」といった点を分析できます。
既存顧客はどのような商材・業種においても重要ですが、特にSaaSやサブスクリプションといった継続利用に力点を置いたビジネスにとって、より重要なマーケティングファネルと言えるでしょう。
ダブルファネル
次にご紹介するのはダブルファネルです。
ダブルファネルは、その名のとおりパーチェスファネルとインフルエンスファネルを合わせたものです。
分析の方向性はパーチェスファネルやインフルエンスファネルと変わりませんが、新規顧客獲得から既存顧客向けの販促活動といった、マーケティングプロセス全体を俯瞰して分析できるという強みがあります。
人口が減少傾向にある日本において新規顧客獲得は難しく、既存顧客に対するアプローチの重要性も年々高まっています。そんな状況においては、継続利用が前提のビジネスだけでなく、様々な業種やサービスにおいても、購買後の顧客体験にも着目することが重要になるのです。
ダブルファネルは、そういった時代の変化に対応するために生み出されたマーケティングファネルと言えるでしょう。
最新のマーケティングファネル:ルーピングファネル
最後にご紹介するのは、ルーピングファネルです。
引用:The new digital marketing funnel
ルーピングファネルは、UPtimiser社のマーケティングコンサルタントであるAmir Nada氏が提唱する最新のマーケティングファネルです。
Amir氏は現代の消費行動について、認知から購買まで一直線に遷移するだけでなく、紆余曲折を伴うループの旅として定義しています。例えば、広告を見て製品を調べたものの購入には至らず、後日別の広告で同じ製品のことを目にして、再び製品について調べ始めるといったこともあるでしょう。これはルーピングファネルにおける「研究と発見のループ」に当てはまります。
また、製品を購入した店舗からクーポンが送られてきたり、セールの知らせを受けることで、検討やリサーチといったプロセスを経ずに製品を購入することもあります。これは「ロイヤルティループ」と呼ばれるものです。
このように、ルーピングファネルは現代の消費行動に最適化されたものと言え、その他のマーケティングファネルでは整理しにくい、パルス型消費行動についても比較的整理しやすいと言えるでしょう。
4.マーケティングファネルと関連するフレームワーク
ここからはマーケティングファネルと関連するフレームワークをご紹介します。
消費者の意思決定の旅
一つ目に挙げられるのは、「消費者の意思決定の旅」です。
引用:The consumer decision journey Mckinsey&Company
消費者の意思決定の旅は、大手コンサルティングファームのマッキンゼーが提唱したモデルです。
マッキンゼーでは消費者の意思決定プロセスを旅に例え、主に以下の4つのプロセスで整理しました。
- Initial-consideration set:購買検討の開始
- Active evaluation:情報収集と積極的な評価
- Moment of purchase:製品を選び、購買する
- Postpurchase experience:購買後の体験
消費者の意思決定の旅では、購買検討を開始したところから購買後の体験までを整理したモデルとなっています。また購買した結果、その製品やサービスに満足すれば「Loyalty loop」へと入り、リピート利用に繋がっていく様子も示しているのです。
フライホイール
次にご紹介するのは「フライホイール」です。
フライホイールモデル HubSpotを元にStrhが作成
フライホイールは、マーケティングオートメーションなどを提供しているHubSpot社が提唱したフレームワークです。消費者行動を説明するというよりも、見込み顧客に対してどのようにアプローチしていくのかを段階的に示したものであり、具体的には以下の3つの段階を経るとしています。
- Attract:有益なコンテンツ提供によって、見込み顧客を引き付ける
- Engage:適切なコミュニケーションを図り、見込み顧客との関係性を構築する
- Delight:顧客の目的達成を支援し、ファン化を促進する
フライホイールは、顧客の目的達成を支援することで自社の成長に繋げていくという考え方をベースとしており、各段階における必要な施策を整理できます。
例えば、Attract段階ではSEOやコンテンツマーケティング、Engage段階ではパーソナライズされたメールやリードナーチャリング、Delight段階ではチャットボットやカスタマーサービスなどが挙げられているのです。
バタフライサーキット
続いてご紹介するのは「バタフライサーキット」です。
「さぐる」「かためる」を蝶のように行き来するバタフライ・サーキットとはなにか:バタフライ・サーキットと 8 つの動機 Think with Googleを元にStrhが作成
バタフライサーキットは、Googleが検索履歴などから発見した情報探索行動の構造のことです。Googleによると、検索行動は「さぐる」検索と「かためる」検索があるとしており、それぞれ以下の動機に分類しています。
【さぐる検索】
- 気晴らしさせて
- 学ばせて
- みんなの教えて
- にんまりさせて
【かためる検索】
- 納得させて
- 解決させて
- 心づもりさせて
- 答え合わせさせて
この「さぐる」と「かためる」の検索を交互に行う行動を、蝶の羽に見立てて「バタフライサーキット」と名付けたのです。バタフライサーキットは、先にご紹介したパルス型消費に繋がる検索行動とされ、これからのデジタルマーケティングにおいて、重要な指針となるフレームワークと言えるでしょう。
マイクロモーメント
最後にご紹介するのは「マイクロモーメント」です。
マイクロモーメントはGoogleが提唱した概念で、「人々が何かをしたいと思い、反射的に目の前にあるデバイスで調べたり、購入したりという行動を起こす瞬間」と定義しています。このマイクロモーメントを正しく捉えることで、ビジネスチャンスに繋げることができるとしているのです。Googleはマイクロモーメントをビジネスに活かす方法として、以下の3つのプロセスが必要だとしています。
- 見極める:消費者のマイクロモーメントが発生するタイミングを見極める
- 届ける:見極めたタイミングにおいて、最適な情報やコンテンツを届ける
- 測定する:効果を測定し、見極めたタイミングの精度などを検証し、改善する
マーケティングファネルはジャーニー型消費行動を分析する上で重宝しますが、マイクロモーメントについては、パルス型消費行動を分析する際に役立つと言えるでしょう。
5.マーケティングファネルの活用方法
最後にマーケティングファネルの活用方法について確認します。
活用方法①:マーケティングにおける課題分析
一つ目の活用方法はマーケティングにおける課題分析です。
先ほどもお伝えしたようにマーケティングファネルは、どのプロセスで顧客がどの程度存在していて、どの程度離脱しているのか、次の購買ステップに移行しているのかといったマーケティングにおける課題を分析できます。例えば以下のように見込み顧客数が遷移したとしましょう。
- 認知段階:100名
- 興味関心段階:80名
- 比較検討段階:60名
- 購買段階:20名
それぞれの遷移率を見ると以下のようになります。
- 認知段階⇒興味関心段階:80%
- 興味関心段階⇒比較検討段階:75%
- 比較検討段階⇒購買段階:33%
認知から比較検討に至るまでは比較的スムーズに遷移しているものの、比較検討から購買に至る過程で、数多くの見込み顧客が離脱していることが分かります。ここから、「比較検討段階において自社を選んでもらえるように促すコンテンツやコミュニケーションが不足しているのではないか」という課題や仮説を発見できるのです。課題を発見した後は、課題解決のための施策を検討・展開していくことになるでしょう。
活用方法②:顧客分析・ペルソナの策定
マーケティングファネルは、ペルソナや顧客分析における仮説を検証する際にも役立ちます。
マーケティングに際して顧客分析を行い、詳細なターゲット像であるペルソナを策定しているケースも多いでしょう。しかしペルソナを基にマーケティングアプローチを実施しているにもかかわらず、想定していた効果は得られずに、購買まで繋がらないことも起こるのです。
そこでペルソナや顧客分析を見直すわけですが、何の当たりもつけずに見直していくのは効率も悪くなります。マーケティングファネルはそういった状況に役立ちます。
マーケティングファネルで各プロセスの離脱率を把握することで、どのプロセスの分析精度が低いのかを割り出すのです。全体的に見直すのではなく、精度の低いプロセスに当たりをつけて、部分的にペルソナのニーズや悩みを再検討できるため、効率的に改善活動に取り組めると言えるでしょう。
活用方法③:最適なアプローチ方法の立案
最後にご紹介するのは、最適なアプローチ方法の立案です。
マーケティングファネルで各購買プロセスの状況を把握することで、どこのプロセスに課題があるかを抽出できる点は先ほど述べました。
マーケティングにおいては、そこからさらにどういったアプローチを展開すべきかを考える必要があります。具体的には、マーケティングファネルで抽出した課題を基に、カスタマージャーニーを見直し、具体的な改善策を検討していくことになるでしょう。
一つ目の活用方法で用いた例では、比較検討から購買にかけて多くの見込み顧客が離脱している状況でした。そこからカスタマージャーニーを見直すと、比較検討段階にいる見込み顧客向けのコンテンツは提供されておらず、営業担当による商談に大きく依存していたことが分かったとしましょう。
その状況を踏まえ、比較検討段階にいる見込み顧客向けに「Webサイト上で活用事例やお客様の声といったコンテンツを提供してみよう」といった、具体的なアプローチの立案を行うのです。
このようにマーケティングファネルは単独で分析するのではなく、カスタマージャーニーと組み合わせることで、最適なアプローチ方法の立案に役立てることができます。
6.まとめ
今回はマーケティングファネルをテーマに、概要や種類、活用方法などを解説してきましたが、いかがでしたか。
マーケティングファネルは古くからある考え方であり、現代の消費行動を完全に整理できないケースもあります。しかしダブルファネルやルーピングファネルなど、比較的新しい消費行動にも対応できるものもあり、これらを上手く活用することでマーケティングにおける課題分析や施策立案に繋げることができるでしょう。またマーケティングファネルに加え、バタフライサーキットやマイクロモーメントなども活用できれば、より精度の高いマーケティング施策展開に繋げられます。
ぜひこの記事を参考に、マーケティングファネルを活用していただければ幸いです。
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執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀
大学卒業後、株式会社TBI JAPANに入社。株式会社Paykeに取締役として出向し訪日旅行者向けモバイルアプリ及び製造小売り向けSaaSプロダクトの立ち上げを行う。
アクセンチュア株式会社では大手メディア・総合人材企業のセールス・マーケティング領域の戦略策定や業務改革、SFA・MAツール等の導入及び活用支援業務に従事。
株式会社Paykeに再入社し約10億円の資金調達を行いビジネスサイドを管掌した後、Strh株式会社を設立し代表取締役に就任。
▼保有資格
Salesforce認定アドミニストレーター
Salesforce認定Pardotスペシャリスト
Salesforce認定Pardotコンサルタント
Salesforce認定Sales Cloudコンサルタント