マーケティングミックスとは?フレームワークやポイント、活用事例などを解説!
この記事でわかること
- マーケティングミックスのフレームワークである「4P」と「4C」とは?
- 4Pから4Cが必要になった背景
- マーケティングの戦略プロセスにおける、マーケティングミックスの位置づけ
- マーケティングミックスを活用するポイントや成功事例
執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀
マーケティングミックスとは、ハーバードビジネススクールの教授ニール・ボーデンが提唱した言葉で、「複数のマーケティング手法を組み合わせる」ことを指します。
マーケティングミックスを理解し、施策の検討に取り入れることでマーケティング戦略に沿った効果的な施策を組み合わせて展開することができます。
本記事では、マーケティング戦略の全体像からマーケティングミックスの成功事例、活用するためのポイントなどを詳しく解説いたします。ぜひ最後までご覧ください。
また、BtoBマーケティングについての基本知識や進め方などについては是非こちらの記事もご参照ください。
参照:BtoBマーケティングとは?戦略の立て方やそのプロセス、成功事例までプロが解説
目次
マーケティングミックスとは?
マーケティングミックスとは顧客にとって効果的なマーケティングを行うために、様々な施策を組み合わせることで、効果の最大化を目指すための実行戦略のことを指します。
一般的にマーケティングは社内外・市場の分析▷戦略・戦術の策定▷施策の実行・改善という手順で行われ、マーケティングミックスは戦略・戦術の策定フェーズで検討することになります。
どの戦略が有効なのか検討する際に、複数の要素の最適な組み合わせを考え、戦略を具体化させるマーケティングミックスが役立つのです。組み合わせを洗い出す際には、後ほど紹介する4Pや4Cといったフレームが使われます。
マーケティング戦略のプロセス概要
マーケティングにおいて重要な役割を担っているマーケティングミックスですが、マーケティング戦略におけるプロセスの一つでしかありません。マーケティング戦略を実行するプロセスは以下のようになります。
1. 社内外環境分析
マーケティング戦略を立てるにあたって、まずは2つの社内外の環境分析を行います。自社内の資源である内部環境と、自社を取り巻く社会要因や競合の動向などの外部環境を分析することで、市場機会を発見し自社にとって最適な戦略を作り出すことができます。内部環境や外部環境の具体例としては以下が挙げられます。
- 内部環境:自社のケイパビリティ、顧客アセット、サービス・プロダクト、資金、ブランド価値など
- 外部環境:競合他社のプロダクト・サービス、関連する法律など、市場構造とバリューチェーン
2. STPの設定
STPというフレームワークを用いてマーケティング戦略にあたる「誰の」「どんなニーズ」にするかを深堀します。STPとは、以下の3つの言葉の頭文字を取った言葉です。
- Segmentation(セグメンテーション):様々な属性に基づいて市場をいくつかの集団に分ける
- Targeting(ターゲティング):分けた市場の中から、自社が狙うセグメントを決定する
- Positioning(ポジショニング):市場における自社の立ち位置を明確にする
STPを設定することで、市場の全体像やターゲットが明確になり、どのようなマーケティング施策を行えばよいのか明らかになります。
参照:顧客セグメントとは?作り方や活用の流れ、成功事例を分かりやすく解説
参照:現場でも混同しがちなセグメンテーションとターゲティングの違いとは?
3. USPの設定
自社独自の強みである「USP(ユニークセリングポジション)」を設定し、顧客に求められ、かつ競合他社には提供できない価値として何が提供できるのかを考えます。競合他社にはない自社ならではの価値を見出すことができれば、それを軸にマーケティングコミュニケーションを展開して行きます。
当然ながらUSPを設定するためには、対象となる顧客が明確である必要があり、顧客に対して魅力的であるUSPを検討する必要があります。そのためSTPの検討ステップにおいて顧客を具体的にペルソナレベルまで落とし込んでおくことはポイントです。
また、UPSの同様の意味で利用される言葉として「バリュープロポジション」があります。バリュープロポジションもUPSと同様の意味合いであるとここでは理解しておきましょう。
USP検討の観点
USPを検討するにあたっては以下のような観点から検討するのも有効です。
- プロダクトの機能
- 独自のサービス
- サポート内容・体制
- サービス品質
- 自社の専門性
- 対応スピード
- 使いやすさ(UI/UX)
- 価格
- 導入実績や事例
4. マーケティングミックスの検討
これまで策定した戦略を元に、ターゲットとするセグメントに対して具体的にどのような施策やチャネルを組み合わせてアプローチしていくかを決定します。
後ほど紹介する、企業目線のフレームワーク「4P」や顧客目線のフレームワーク「4C」を活用しながら策定しましょう。
5. 施策実行と効果検証
マーケティングミックスに基づいた施策を実行し、合わせて効果検証を行います。想定していたほど効果がでない、ということも往々にして起こりえますので定期的に効果検証を行い、その都度改善していくことが重要です。
参照:マーケティング戦略とは?立案手順や役立つフレームワークを事例付きでわかりやすく解説
マーケティングミックスの基本構成要素
マーケティングミックスを構成する要素として、良く知られているフレームワークに、主に用いられるのが企業目線に立った「4P」と顧客目線に立った「4C」があります。ここではそれぞれの違いや、背景などを理解しましょう。
マーケティングにおける4P
4Pは1960年にアメリカの学者エドモンド・マッカーシーが提唱した理論であり、マーケティングの基礎となる概念です。企業側、売る側の視点でマーケティングを捉えたもので、以下の4つの要素を指します。
4Pの構成要素
4Pは製品、価格、流通、宣伝の4つの要素で構成されています。
- 製品(Product):市場に提供される商品やサービス
- 顧客に提供する価値を考えて製品のコンセプトを決め、生産方法やパッケージ、ポートなどを細かく決めていきます。製品は4Pの中で軸となる構成要素です。
- 価格(Price):製品やサービスの販売価格
- 生産コストや市場の需要と供給、競合企業の価格などを考慮しながら適正な価格を決定します。
- 流通(Place):製品が消費者にどのように届けられるか
- 店舗かオンライン、イベントかなど、商品の特性に合わせて適切な流通チャネルを決定します。
- 宣伝(Promotion):製品を顧客に認知させ、購買を促すための活動
- テレビ広告、テレアポ、展示会、SNSでの宣伝など多岐にわたり、製品の認知度を高めていきます。
これら4つの組み合わせを通じて、企業は市場での競争優位を確立していきます。
マーケティングにおける4C
4Cは、4Pを顧客側の視点から捉え直したものです。4Cは、1993年に大学教授のロバート・ローターボーンにより提唱されました。
4Cが生まれた背景
4Pは1960年代に「モノ」中心のビジネスを想定して作られました。当時は「プロダクトアウト」と呼ばれる、企業が作りたいものを基準に商品を開発する方法が主流になっており、次々に新商品が開発され、新しい機能が追加されるたび飛ぶように売れました。
しかし技術革新が進み、多くの企業が同じような製品を開発していったことで、企業間の商品やサービスに差異が無くなって行きました。そこでマーケティング理論を企業側の立場だけでなく、消費者の目線からも見直してみようという動きが生まれました。こうして生まれたのが顧客側、買う側の視点でマーケティングを捉えた4Cです。
また現在では、インターネットに多くの情報が集まり、顧客側から能動的に情報を求めることが多くなっています。そのため、マーケティングにおいても「顧客」を主語にした考え方が広がり、定着化しつつあります。
4Cの構成要素
4Cは顧客価値、コスト、利便性、コミュニケーションの4つの要素で成り立っています。
- 顧客価値(Customer Value):製品やサービスに対して持つ価値
- 製品そのものの価値だけでなくアフターサポートなども含まれ、企業は顧客のニーズを満たした製品を提供することが重要になります。
- コスト(Cost):製品やサービスを入手するために負担するコスト
- 購入価格だけでなく、取得のためにかかる時間や労力など使用に関連するコストも含まれます。企業は顧客が製品やサービスを利用する際のコストを理解し、最小化する努力が必要です。
- 利便性(Convenience):製品やサービスの入手や使用のしやすさ
- どこで、どのように購入できるかなど購入のしやすさに加え、Webサイトの検索機能や文字の配置など使いやすさも考慮する必要があります。
- コミュニケーション(Communication):企業と顧客間の双方向の対話
- 一方的なメッセージの発信ではなく、SNSやアンケートなどから顧客のフィードバックや意見を取り入れ関係を構築していきます。
4Cの延長線上には、カスタマージャーニーという考え方があります。
カスタマージャーニーとは、顧客が商品に興味を持ってから購入するまでの過程を表したものです。タッチポイントごとに顧客が何を考え、どのような行動をとっているのか整理することで、適切なタイミングでコミュニケーションを取ることが可能になります。
顧客の立場に立ち、タイミングごとに顧客行動を整理している点で4Cをさらに進化させたものと言えるでしょう。
マーケティングミックスの成功事例
こちらでは、お菓子を取り上げてマーケティングミックスの成功事例を解説していきます。
江崎グリコ『ポッキー』
出典:https://www.glico.com/jp/product/chocolate/pocky/
江崎グリコの看板商品である『ポッキー』。ポッキーは1966年に世界で初めての棒状チョコレート菓子として誕生しました。2020年には世界売上No.1として、ギネス世界記録認定されるほど世界中で多くの人に愛されています。
4Pの構成要素 | 内容 |
---|---|
商品(Product) | 多彩な種類の商品ラインナップ ・定番のシリーズ ・地方限定商品(東北限定、九州限定、北海道限定など) ・高級志向の商品(プレゼントや自分へのご褒美におすすめしている) |
価格(Price) | 1箱160円~1080円のものまで |
流通(Place) | スーパーやコンビニ、ドラッグストア、公式オンラインショップなど |
宣伝(Promotion) | テレビCM ・大人向け「ポッキーオンザロック」 ・OL向け「旅にポッキー」 ・中高生向け「ポッキーダンス」 ・主婦層向け「何本分話そうかな」 |
ポッキーはマーケティングミックスを時代に合わせて変化させ、いつの時代も「どのようなシーンで食べてもらうか」を重視しています。
例えば1970年代に発売された『ポッキー・オン・ザ・ロック』は大人向けのポッキーです。当時飲食店でポッキーをマドラー替わりに使って楽しむのが流行していたことから、テレビCMでは実際にポッキーをグラスの中でクルクル回す演出が取り入れられ、新たな楽しみ方として話題を呼びました。
また昨年9月には「いつかさそおう、を今日さそおう。」と人と繋がることへの価値を伝えたCMが放映されました。コミュニケーションが多様化し、人との距離が遠くなっている現代ですが、ポッキーを使って「勇気を出して大切なひとに声をかけてみませんか」といったメッセージを伝えています。
参考:https://www.oricon.co.jp/special/53070/
カルビー『じゃがりこ』
出典:https://www.calbee.co.jp/jagarico/products/detail/sarad
1995年に発売されてから、カルビーのロングセラー商品である『じゃがりこ』。スティック状でカップ容器に入っているのが特徴で、食べやすく持ち運びしやすいお菓子として知られています。
4Pの構成要素 | 内容 |
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商品(Product) | 多彩な商品形状の商品ラインナップ ・Lサイズや一口サイズの商品 ・ジッパーがついた袋状の商品 ・小袋が4つ繋がった商品 |
価格(Price) | 1箱160円~ |
流通(Place) | スーパーやコンビニ、ドラッグストア、オンラインショップなど |
宣伝(Promotion) | テレビCM ・1995年「じゃがりこ食べ」 ・2023年「じゃがりこ細いやつ 止まらないやつ」 会員制のファンサイト「じゃがり校」 |
じゃがりこは、ファンが新しい楽しみ方をSNSにアップし、ユーザー間での交流が生まれることにより成長しています。これは、会員制のファンサイト「じゃがり校」などを通して顧客と密にコミュニケーションをとってきたからだと言えるでしょう。また「じゃがりこ食べ」のCMなどから、ファンからいじられやすい商品属性を作り上げていることもカルビーの戦略であると言えます。
2016年には誕生日などのサプライズ演出に、じゃがりこを複数個積み上げた「じゃがりこタワー」が中高生の間で楽しまれました。価格が安く手軽に購入でき、積みやすい形状であるという、じゃがりこの強みが生かされたユニークな楽しみ方であると言えます。
また2019年には、料理研究家がTwitterで考案した「じゃがアリゴ」が話題になりました。「じゃがアリゴ」はじゃがりこにチーズを加えて作るマッシュポテトで、リツイートが13万回、いいねが42万回されるほど拡散されています。
参考:https://twitter.com/ore825/status/1089847571814612993
マーケティングミックスを活用する際の5つのポイント
最後に、マーケティングミックスを成功させるための5つのポイントをご紹介します。
マーケティング戦略に適合したものにする
マーケティングミックスは、これまで策定したマーケティング戦略を具体化させる手段であるということを忘れないようにしましょう。戦略に沿ってマーケティングミックスを行わなければ、ブランドイメージの一貫性が損なわれたり外部の変化に対応できなくなる恐れがあります。
顧客像を詳細に設定する
施策を実行する前には、自社の理想的な顧客像である「ペルソナ」を具体的に設定しましょう。ペルソナを作成する際は、大まかな年齢や性別といった属性情報だけでなく、職務上の役職や会社の規模、最近の関心ごとや課題、行動特性まで1人が想起できるレベルで詳細に作り上げましょう。
顧客像を細かく設定することで、顧客にとってよりパーソナライズされた効果的な体験を提供するためのインプットとなります。
参照:【DLできるテンプレート公開】ペルソナとは?作り方の5つのステップや具体的な活用方法を解説
要素の整合性を意識する
マーケティングミックスでは、4Pと4Cのそれぞれの要素の整合性や相乗効果を意識することが重要です。
例えば、希少価値の高い原料を使用した20代向けのサプリメントを開発し、価格帯も高めに設定したとします。この商品はどのようなチャネルで販売するのが(Place:流通経路)好ましいでしょうか?
例えばこの商品を全国展開のコンビニチェーンで販売した場合、購入は手軽に行えますが、コンビニで買えるというイメージで高級やプレミア感が薄れてしまい、価格と流通経路の整合性が取れないため、長期的にはブランドイメージの毀損に繋がる可能性が考えられます。また、そもそも消費者がコンビニに求める商品価格帯と本商品の価格帯が合わず手に取られない可能性も考えられます。
しかし、専門機関からの認証をもらい特定の美容外科で販売するとしたらどうでしょうか。価格を高めに設定したとしても、希少価値を推すことでプレミア感を醸成でき、品質と価格、販売チャネルのバランスが取れる可能性が考えられます。
このように、製品のターゲットや価格設定が妥当か、流通経路とプロモーションの整合性が取れているかなどマーケティングミックス全体で統一が取れているかを確認しましょう。
4Pと4Cを組み合わせて使う
4Pと4Cはベースとなる視点が異なります。企業目線である4Pは、マーケティングにおける具体的な施策を検討する際に適しています。一方で、顧客目線である4Cは、お客様にとってのメリットを考える際に役立ちます。
そのためどちらか一方を選択して実行するのではなく、双方を考慮しながら抜け漏れのないマーケティングミックスを実行しましょう。まずは顧客のニーズを満たすために4C分析を行ってから、企業目線に立った4P分析を行うのがオススメです。
競合他社との差別化を図る
マーケティングを実行するうえでは、市場での位置づけを確立し、顧客から選ばれる理由を明確にするため競合他社との差別化が重要です。例えば、独特なデザインを持つ製品や価格設定、競合よりも利便性の高いチャネル、ターゲットに共感を呼ぶプロモーションなどが挙げられます。
単に機能面や提供サービス面、価格の観点から表面的な競合比較を行うだけでなく、ターゲットとなる企業に対してデプスインタビューなどの定性調査も含めて、より一歩踏み込み競合のマーケティングミックスも分析した上で自社と比較し、顧客からの潜在・顕在ニーズに応えてかつ、自社の強みが活きる差別化を検討しましょう。
まとめ
今回は、マーケティングミックスの意味やマーケティング戦略を策定する際のプロセス、活用する際のポイントなどをご紹介しました。
マーケティングミックスは、マーケティングの具体的な戦術を決める施策であるため、まずはターゲティングやポジショニングなどの戦略立案を行ってから取り組む必要があります。実際に活用する際には「4P」と「4C」の2つのフレームワークを活用し、まず4Cで顧客視点の分析を行ってから、企業目線の4Pで具体的な戦術へと落とし込んでいきましょう。
Strhではマーケティングの戦略から実行支援までを一貫して実績を持ったコンサルタントがご支援いたします。マーケティングについてお困り事がございましたら、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。
執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀
大学卒業後、株式会社TBI JAPANに入社。株式会社Paykeに取締役として出向し訪日旅行者向けモバイルアプリ及び製造小売り向けSaaSプロダクトの立ち上げを行う。
アクセンチュア株式会社では大手メディア・総合人材企業のセールス・マーケティング領域の戦略策定や業務改革、SFA・MAツール等の導入及び活用支援業務に従事。
株式会社Paykeに再入社し約10億円の資金調達を行いビジネスサイドを管掌した後、Strh株式会社を設立し代表取締役に就任。
▼保有資格
Salesforce認定アドミニストレーター
Salesforce認定Pardotスペシャリスト
Salesforce認定Pardotコンサルタント
Salesforce認定Sales Cloudコンサルタント