Account Engagemet(旧 Pardot)のオプトアウトとは?配信停止管理の仕組みとSalesforceとの連携について徹底解説
この記事でわかること
- Account Engagementにおけるオプトアウトの仕組み
- 「オプトアウト」と「Do Not Email」の違い
- Account Engagementにおける手動でのオプトアウト方法
- Summer’21のアップデート後による、Account EngagementとSalesforceのオプトアウト項目連携仕様
執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀
Account Engagement(以下、Pardot)は、見込み客に有益なコンテンツを提供し、リードナーチャリング(顧客のフェーズに沿って自社への関心を高めて)をしていくために有効なMA(マーケティング・オートメーション)ツールです。
一方で「個人情報保護法」や「特定電子メール法」などの法改正により、メールマーケティングの規制が増えていることはご存じでしょうか?実は有益だからといって、無造作にすべての顧客へメール送信することは、知らない間に法律に抵触してしまい、会社全体の評価に重大な影響を及ぼす可能性もあります。
本記事ではPardotでメール送信を始める前に必ず知っておくべきオプトアウトについて、言葉の定義や管理する上で注意すべき点など詳しく解説いたします。
オプトアウトについて正しく理解することで、有望な見込み客に絞った効果的なメールマーケティングや効率的な営業担当者との連携を実施することが可能です。本記事を参考に自社のメールマーケティング見直しにご活用ください。
参照:Account Engagement(旧 Pardot)とは?機能や特徴、他のMAツールとの比較も含めて徹底解説
目次
オプトアウトとオプトインとは?
まずは”オプトアウト”と“オプトイン”について解説いたします。
オプトアウトとは、キャンペーンやクーポンといった企業が配信するマーケティングメールについて、顧客が受け取りを拒否する意思表示を指します。顧客がオプトアウトすることにより、企業は該当顧客のメールアドレスが自社に登録されているとしても、広告宣伝のメール配信を送ることができなくなります。
反対にオプトインは、顧客に広告宣伝メールを配信する際に事前に配信の承諾を得ることを指します。国内外からの悪質な迷惑メールの増加を背景に個人を保護する目的で2008年に特定電子メール法改正案が施行されました。
改正前は企業が取得した顧客のメールアドレスに対して、原則自由に広告宣伝メールを配信できましたが、改正後は企業が顧客の事前同意なく、広告宣伝メールを配信することは禁止されています。そのため企業は顧客のオプトアウト、オプトイン状態を明確に管理し、メール配信を行うといった対応が求められるようになりました。
また同時に顧客にオプトアウトをされないよう、顧客の興味に沿ったシナリオ作成やターゲティングなど戦略的なメールマーケティングがより重要になっています。
参照:【マーケ担当者必読】メールマーケティングとは?メルマガとの違い、メリット・デメリット、具体的な手法等について解説
Account Engagement(旧 Pardot)におけるオプトアウトの仕組み
Summer’21アップデートにより、Pardotにおけるオプトアウトの仕様が変更されました。
大きな変更点は“オプトアウト”と“Do Not Email(メール送信除外)”がそれぞれ独立して管理できることです。この2つが独立して管理できることでどんな変化があるのか、”オプトアウト”と”Do Not Email”の違いにも触れながら紹介します。
「オプトアウト」と「Do Not Email」
Summer’21アップデート以前は、「オプトアウト」と「Do Not Email」は相互に自動連携がなされていました。具体的には顧客がメールからオプトアウトを実施した場合、Pardotの「オプトアウト」項目にチェックが入った後、「Do Not Email」項目にも自動でチェックが入るよう連携がなされます。
一方Summer’21アップデート以後は、「オプトアウト」項目と「Do Not Email」項目が独立して管理されるようになりました。この変更により企業は、顧客自身が明確にオプトアウトの意思表示をしたのか、または自社の判断など別の理由によってメール配信をしない対象になったのか区別できるようになっています。
「オプトアウト」と「Do Not Email」の違いとは?
さらにここでは「オプトアウト」と「Do Not Email」の違いについて整理をいたします。
「オプトアウト」は顧客がメールなどを経由して、企業から配信される広告宣伝メールの受け取りを拒否することです。つまり顧客が主体であり、オプトアウトによって示された顧客の意思表示は「特定電子メール法」でも保護される重要なものです。
一方で「Do Not Email」は顧客のオプトアウト以外の理由によって、企業側の意思で当該顧客へのメール配信を停止することを意味します。つまり企業が主体であり、「Do Not Email」によるメールの配信可否については企業側の意思決定によるところが大きくなります。
実務上気を付けるべき点として、見込み客に再度メール配信をするために「Do Not Email」項目のチェックを外すべきところ、「オプトアウト」項目のチェックを外してメールを配信しないよう注意してください。「特定電子メール法」に違反することになってしまいます。
Account Engagement(旧 Pardot)におけるオプトアウトとは?
Pardotでオプトアウトに該当する条件は、顧客が自分の意思で広告宣伝メールの受信を解除した場合です。顧客がメールなどを経由して、登録解除リンクをクリックしメール配信を解除した場合、Pardotのオプトアウト項目にチェックが入ります。
オプトアウト項目にチェックが入っている見込み顧客には、再度オプトインをしてもらうまでマーケティングメールの配信が不可となります。
Account Engagement(旧 Pardot)における「Do Not Email」とは?
一方Pardotで「Do Not Email」にチェックが付く条件は複数あり、具体的には以下のような場合が該当します。
- ソフトバウンス5回:一時的な理由でメール配信ができない場合のエラー(受信箱の容量を超過している、あるいはメールのサイズが大きい場合など)によってチェックが付く
- ハードバウンス:永続的な理由でメール配信ができない場合のエラー(アドレスやドメインが実在しない、あるいは受信者側のメールサーバーがメール受信を拒否しているなど)によってチェックが付く
- 送信者側の意思:自社の競合企業や直近でクレームが発生した際など特別な事由がある際に送信者側の設定によってメール配信がされないようにチェックを付ける
「Do Not Email」は「オプトアウト」と異なり、企業側の意思によってメール配信を停止することを管理するための項目です。そのため状況が変わって、企業が再度メール配信を希望する場合には「Do Not Email」項目のチェックを外してメール配信を再開することが可能です。
メールの可能性について
またSummer’21のアップデートによる大きな変更点の一つとして、「メール可能性」ブロックが追加されました。
これにより見込み客のオプトアウトやDo Not Email項目チェック状況の他、顧客のハードバウンスやソフトバウンスの状況、重複して登録されているメールアドレスがないかなど、企業側は見込み客へのメール配信可否がすぐに判断できます。
「状況」項目にあるメールアイコンが緑色の場合は、マーケティングメールとオペレーショナルメールの全てのメールを顧客が受信可能な状態です。
一方で「状況」項目にあるメールアイコンが赤色の場合は、顧客へオペレーショナルメールのみが配信されており、マーケティングメールは配信されておりません。
上記メールアイコンは以下条件に基づいて表示されます。
オプトアウト | Do Not Email | メール可能性状況 |
---|---|---|
False | False | メール配信可能 |
True | False | オペレーショナルメールのみ |
False | True | オペレーショナルメールのみ |
True | True | オペレーショナルメールのみ |
Account Engagement(旧 Pardot)におけるオプトアウト関連項目
ここでは改めてPardotのオプトアウトに関連する項目について紹介します。
オプトアウト関連項目 | 内容 |
---|---|
Opted Out | プロスペクトがメール内に記載されている「登録解除」リンクをクリックし、メールをオプトアウトした状態 |
Do Not Email | 営業サイドの判断でメールを送信したくない特定の顧客などが存在する場合などに、意図的にメール送信除外を行うケースで設定する。顧客の意思ではなく、自社の意思での設定が基本。 |
ソフトバウンス | 受信者のメールサーバーが一時的に利用できない状態や、メールボックス容量が上限に達しているため、メールが差し戻されること。ソフトバウンスが5回発生するとハードバウンスとなる。 |
ハードバウンス | 受信者のメールアドレスが無効であり、メールが送信できない状態。ドメイン名が存在しないか受信者が不明なため発生するケースが多い。 |
Account Engagement(旧 Pardot)における手動でのオプトアウト方法
顧客がメールを経由して登録解除リンクよりオプトアウトを行う他にも、問い合わせフォームや営業担当者が直接顧客よりメール配信停止の依頼を受けることもあります。
その場合には企業が手動で該当顧客のメール配信登録を解除する必要がありますので、以下では、手動によるメール配信登録の解除手順について説明します。
メール配信登録の解除方法
- Pardotのプロスペクト一覧からメール配信登録を解除する見込み客をクリックします
- 右上にある「編集」ボタンから、プロスペクトの編集画面に遷移します
- プロスペクトの「メール可能性項目」をクリックし、オプトアウト項目のプルダウンリストより「True」を選択します
- 「プロスペクトを保存」をクリックします
以上でメール配信登録の解除がされました。
念のため該当顧客の「メール可能性」ブロックから「状況」が“オペレーショナルメールのみ(赤いメールアイコン)”になっていることを確認しましょう。
Account Engagement(旧 Pardot)とSalesforceのオプトアウト項目の連携について
さらにSummer’21のアップデートでは、PardotとSalesforceのオプトアウト項目連携についても仕様が変更されました。従来の設定のままではPardotとSalesforceのデータが正しく同期されない可能性もあるため、アップデート前後でどのように変化したのかを整理しながら、自社の設定についてもぜひ見直してみてください。
これまでのAccount Engagement(旧 Pardot)とSalesforceのオプトアウト項目連携仕様
先ほども述べた通り、Summer’21のアップデートによってPardotのオプトアウト項目とSalesforceのオプトアウト項目の連携について仕様が変化しました。Summer’21のアップデート以前は、オプトアウト項目の連携方法を以下の3つのオプションから選ぶことができました。
- Salesforceの値を使用する
- Account Engagement(旧 Pardot)の値を使用する
- 最近更新したレコード値を使用する
「Salesforceの値を使用する」と「Account Engagement(旧 Pardot)の値を使用する」はオプション選択後の挙動についてもイメージしやすいかと思います。
「Salesforceの値を使用する」を選択していれば、Pardotのオプトアウト項目に入っている値に関係なく、Salesforceのオプトアウト項目に入っている値が優先されます。「Account Engagement(旧 Pardot)の値を使用する」を選択している場合はその反対です。
では「最近更新したレコード値を使用する」については、どのような挙動になるのか。Summer’21のアップデート以後のオプトアウト項目オプションとの違いについて触れながら説明いたします。
現在のAccount Engagement(旧 Pardot)とSalesforceのオプトアウト項目連携仕様
Summer’23のアップデートにて、オプトアウト済み項目の同期オプションとして「最近更新した項目値を利用する」が利用できるようになりました。これまではオプトアウト済み項目の同期オプションとして以下の3つのオプションを選択することが可能でしたが、ここに新しいオプションが追加されることになりました。
- Salesforceの値を使用する
- Account Engamentの値を使用する
- 最近更新したレコード値を使用する
- 【New】最近更新した項目値を使用する
また、このアップデートに伴って、オプトアウト済み項目を変更すると「最近更新したレコード値を使用する」というオプションは使用できなくようになっております。
「最近更新した項目値を使用する」と「最近更新したレコード値を使用する」の違い
それでは新たに追加された「最近更新した項目値を使用する」と、これまで選択できた「最近更新したレコード値を使用する」は何が違うのでしょうか?
「最近更新したレコード値を使用する」の場合は、オプトアウト済み項目以外の項目が更新された場合も、オプトアウト項目が更新したレコード値で更新されるといった挙動になります。
■「最近更新したレコード値を使用する」の例
- Account Engagement:オプトアウト済み項目(opted_out)がTRUE
- Salesforce:メール送信除外(HasOptedOutOfEmail)がFALSE
Salesforceのメール送信除外(HasOptedOutOfEmail)以外の項目に更新があったら、Account Engagementのオプトアウト済み項目(opted_out)がFALSEに更新される
一方で「最近更新した項目値を使用する」を選択した場合は、「オプトアウト済み項目の更新をトリガー」に更新されるといった挙動になります。
■「最近更新した項目値を使用する」の例
- Account Engagement:オプトアウト済み項目(opted_out)がTRUE
- Salesforce:メール送信除外(HasOptedOutOfEmail)がFALSE
Salesforceのメール送信除外(HasOptedOutOfEmail)がFALSEで更新されると、Account Engagementのオプトアウト済み項目(opted_out)もFALSEに更新される
このアップデートによって、オプトアウト項目以外の更新によるオプトアウト項目の上書きを防ぐことができるようになりました。
オプトアウトを上書きすることができるコネクタオプション
これまでSalesforceと同期されたオプトアウト済みプロスペクトを配信対象に戻す場合、SalesforceまたはPardotの画面からオプトアウトのチェックを外しても2分に1回の同期が行われると、オプトアウトのチェックが戻ってしまい送信対象に戻すことが難しい状態でした。
そのため、運用のなかでオプトアウト項目のSalesforce連携を外して独立した状態を作っておくといったような対応が必要でした。
これはSalesforceの仕様上、空白値でPardotの値を更新することができないことが原因で発生していた課題でしたが、現在ではコネクターのオプションにてオプトアウトを上書きできる機能が追加されています。これによってオプトアウト項目が上書きできるようになり、オプトアウト状態に戻ってしまうといったことなく手動でのオプトインの対応を行うことができるようになりました。
■オプトアウトの上書きコネクタオプションの設定方法
①Account Engagement設定>コネクタ>Salesforceの歯車マークをクリックし「設定を編集」を選択します。
②『「プロスペクトオプトアウト済み」項目を上書き』のチェックボックスにチェックをします。
③Pardotのデフォルト項目編集画面からオプトアウト項目を選択し、連携項目として、Salesforceの「HasOptedOutOfEmail」を選択します。
以上でオプトアウトの上書きオプションの設定は完了です。
まとめ
ここまでオプトアウトの基本的な理解からPardotとSalesforceのオプトアウト項目連携について解説してきました。
「特定電子メール法」といった法対応も関わる重要な実務でもあるため、オプトアウトについてPardotにも様々な関連機能が提供されています。ただし何もかも守りに入って顧客へのメール配信を抑制するのではなく、正しい理解を基にメール配信設定をすることで、他社とは一歩差がつくメールマーケティングを実行することができます。
ストラではPardotの設計導入はもちろん、最新のアップデートや法対応を踏まえ、一社一社に合わせたマーケティング戦略から実行支援まで一貫したコンサルティング支援が可能です。見込み客獲得に向けてPardotを導入したけど、自社に適した運用が難しいといったお困り事がございましたら、こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。
執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀
大学卒業後、株式会社TBI JAPANに入社。株式会社Paykeに取締役として出向し訪日旅行者向けモバイルアプリ及び製造小売り向けSaaSプロダクトの立ち上げを行う。
アクセンチュア株式会社では大手メディア・総合人材企業のセールス・マーケティング領域の戦略策定や業務改革、SFA・MAツール等の導入及び活用支援業務に従事。
株式会社Paykeに再入社し約10億円の資金調達を行いビジネスサイドを管掌した後、Strh株式会社を設立し代表取締役に就任。
▼保有資格
Salesforce認定アドミニストレーター
Salesforce認定Pardotスペシャリスト
Salesforce認定Pardotコンサルタント
Salesforce認定Sales Cloudコンサルタント