セールスイネーブルメントとは?導入の手順から成功事例、使えるツールまで完全解説!

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セールスイネーブルメントとは?導入の手順から成功事例、使えるツールまで完全解説!

この記事でわかること

  • セールスイネーブルメントとは何か、導入のメリット
  • セールスイネーブルメントの具体的な実施方法
  • 実際のセールスイネーブルメント成功事例とツールの活用方法

執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀

ここ数年セールスやBtoBマーケティングにおいて注目を集めているセールスイネーブルメント。言葉を耳にしたことはあるけれどどのようなものなのか分からない、何から取り組むべきかが具体的に分からない、自社で取り組もうか迷っているという人も多いのではないでしょうか。

そこで本記事ではセールスイネーブルメントの定義から導入の手順、使えるツールまで完全解説します!

 セールスイネーブルメントとは

営業の力を育成する手法として注目を集めているセールスイネーブルメント。日本ではまだあまり聞き馴染みのない言葉ですが、そもそも何を指すのでしょうか。

直訳すると「セールス」=「営業」、「イネーブルメント(eablement)=「有効化」すなわち「営業活動の有効化」となり、営業組織全体の力の底上げを図る取り組み全般のことを指します。

ここからはより詳しくセールスイネーブルメントについて説明します。

セールスイネーブルメントの定義

日本におけるセールスイネーブルメントの第一人者に、「セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方」の著者である山下貴宏氏がいます。山下氏は本の中でセールスイネーブルメントを「成果を輩出し続ける人材育成の仕組み」と定義しています。

一般的に営業は属人的になりがちです。営業担当の勘と経験で成り立っていたという企業も少なくないでしょう。しかし、トップセールスに頼っていると対応できる件数にも限りがあり、組織として非効率的です。

そこで、経験を数字に落とし込み、データを使って組織全体の営業力を上げることで、個の力に頼らずに成績を残すことのできる営業の体制作り=「成果を輩出し続ける人材育成の仕組み」を構築することがセールスイネーブルメントというわけです。

セールスイネーブルメントが注目されている背景

近年日本でも注目され始めたセールスイネーブルメントですが、その注目度は実際の数値にも見ることができます。セールスイネーブルメントの市場は拡大を続けており、Research&Markets社の調査によると、2020年に22億円だった市場は2030年には119億円もの規模になると予想されています。

では、このようにセールスイネーブルメントが注目されている背景はどこにあるのでしょうか。

①業務効率の重要化

一つ目の理由として、労働人口減少によって業務効率が重要視されるようになったことがあげられます。

リソースが限られる中で優秀な営業に頼るだけではなく、営業チーム一人ひとりに高い営業スキルが求められるようになりました。
また、昨今新人においても、いかに短期間で戦力化させるかということも求められるようになり、新人研修期間を減らし、できるだけ短期間で戦力化することができればより企業としての生産性はあがります。

②顧客ニーズの複雑化・高度化

二つ目の理由としては、インターネットやSNSの登場により顧客のニーズが複雑化・高度化したことがあげられます。

インターネットを通じて、 顧客は今までとは桁違いに多くの情報を得られるようになりました。企業側が「選ばれる」商品を目指す中で、商品はますます多様化し、顧客ニーズはより一層複雑で高度なものになってきています。

顧客は営業で完結せずに、マーケティング部門とのコミュニケーション強化や顧客データ活用を通じて、顧客ごとのニーズを正確に捉え、柔軟な対応を求められるようになりました。

こういった背景からセールスイネーブルメントが市場から求められ、注目されつつあるのです。

セールスイネーブルメントに取り組むメリット

セールスイネーブルメントが注目されている背景がわかったところで、セールスイネーブルメントを採用するメリットについて解説します。

営業活動の可視化

営業プロセスを数値として可視化することができます。その結果、どの施策が成果を上げたか分かる、次に似た案件を手がける際には作業の無駄をカットできるなどの利点があります。

また、各営業担当者が行った営業活動を可視化することで、だれが貢献したのかが分かり、営業担当のモチベーションの向上にも繋がるでしょう。

営業プロセスの管理の効率化

営業担当者が進めている商談の状況だけでなく、顧客情報やリード情報、営業担当の行動など営業に関するあらゆるデータを管理することで、作業がかぶることがなくなり、営業活動をより効率的に行うことができます。

加えて、引き継ぎの際に抜け漏れが起こるリスクや、リードへのアプローチ機会を逸する確率を減らすことも可能です。

営業成績の向上

営業プロセスを整理する段階で、それぞれの営業活動の結果をもとに「成功パターン」を割り出し、フォーマット化することで営業力のばらつきを低減することができます。また、社内コンテンツを整理し提供・再利用できるようになり、顧客満足度の向上も見込めます。

このように、各人の営業スキルが向上すればトップセールスに頼らずとも商談を効果的に進めることができるようになり、営業成績の向上やその結果として企業の売り上げ増加も期待できます。

セールスイネーブルメントを推進する5つの手順

1. 営業データの整理・収集

まずは自社の現状と課題を把握するために営業データを集めます。データを集める環境を整備するためには、必要に応じてSFAなどのツールを使うと効果的です。(営業データ収集に使用できるツールについては後述します。)

その他、ツールを使わないデータ収集として、営業に対するヒアリングやサクセスシェアリングが挙げられます。

データの活用方法についてはぜひこちらもご覧ください。

例えば、営業担当に「どんな目的」で「どんな行動」をしているのかヒアリングすることは有効でしょう。営業には様々なタイプの人がいますが、トップセールスの共通点を探しチップを共有することで後輩の育成に繋がります。

サクセスシェアリングとは、トップセールスの成功事例を共有し、スキルを細かく聞き出し、誰でも使える実務的なコンテンツに絞って提供する方法です。

ヒアリングの方法についてはこちらの記事もぜひ参考にしてみてください。

2. 推進の責任者・体制の決定

自社の現状と課題を明確にできたら、責任者とチームの体制をきめてプロジェクトを進めます。セールスイネーブルメントは大掛かりな取組みなので、長期的な視点を持ってプロジェクトとして進めることが大事になります。

責任者は育成に興味がある人だとベストです。営業経験はあればベターですが、営業経験よりも育成に興味があることが大事になります。営業経験はあっても、育成への興味がないと自分の手腕のお披露目会になりかねないからです。

また、チームのメンバーとコミュニケーションを取って進めていくことが必要となるため、コミュニケーション能力の高い人だとより良いでしょう。セールスイネーブルメントの第一人者である山下貴宏氏によると、チームの人数は、組織全体の人員数の1~3%がいいといわれています。

あとは手順①で出てきた課題に対して優先順位をつけ、それぞれにアプローチします。

3. コンテンツ・プログラムの開発・提供

課題が明らかになり、責任者や体制も決定したら次はいよいよ実践です。

育成のコンテンツは主に2種類あります。

トレーニングコンテンツ

トレーニングコンテンツは、社員一人一人が取り組むものです。eラーニングやワークショップなどの形態が考えられます。トップセールスを参考にした研修コンテンツや、場合によっては学習ツールの使用(後述)が有効です。

メンバー一人一人が向上心を持って、学んだことをいかに営業プロセスに組み込むかが鍵となります。

営業コンテンツ

今までの事例や競合に関する情報、提案書のテンプレートなどがあげられます。作成後すぐに使用できるため、即効性がある手法です。また、業界・プロダクト毎などに分けて一元管理すると作業効率もより上がるでしょう。

4. 成果の検証

コンテンツの活用が進んだら、次は取り組みの成果の検証をします。数値は上を目指すとキリがありません。プロジェクト全体のみならず各コンテンツに対してもKPIを定めておくと検証がしやすくなります。

5. PDCAを回す

成果を検証したら、データをもとにコンテンツの改善をするなど、場合に応じて違う策を試したり、補強手段を打ったりします。またそれに対して成果を検証する、の繰り返しです。

PDCAを続けることで、社内への理解を促進できたり賛同者が集まり、更に有益なフィードバックを得て、よりよいコンテンツ開発や仕組みの構築を行うことができるでしょう。

セールスイネーブルメント推進のポイント

1. 目標とKPIを明確にする

セールスイネーブルメントはいくらでも突き詰めることができるので、プロジェクトを始める際にしっかりと目標を定めておくことが成功には欠かせません。前述したように、プロジェクト全体のみならず各コンテンツごとにKPIを定めることでケジメのついたプロジェクトになります。また、このとき各メンバーの数値は、平均値ではなく中央値で判断します。平均値で判断すると、一部の優秀なセールスマンに引っ張られてしまい、適切に判断できない場合があるためです。

BtoBビジネスにおけるKPIの設定方法については、ぜひこちらの記事もご覧ください。

2. CRM/SFAツールの活用

営業活動の底上げを図るセールスイネーブルメントにおいて、データの活用は必須です。例えば、CRMやSFAを活用して、社内の顧客・商談情報など営業活動に関連するデータを集約できれば、セールスイネーブルメントを後押しすることにも繋がるでしょう。

3. 継続的なトレーニングと結果測定

セールスイネーブルメントは一朝一夕で完了するものではなく、一般的に完了するまでに3年ほどかかると言われています。プロジェクトにして継続的に行うという意識が大切になります。営業メンバーにとっては本業の傍らで行うものですから、無理せず進めることが成功の秘訣です。

推進する立場の人は中長期経営計画に則って、どの領域をどれくらい伸ばすために、何人をどのペースで育成するのか考え計画を立てて進めましょう。

セールスイネーブルメントで使えるツール

1. データ収集のためのCRM/SFAツール

CRMとは「Customer Relationship Management」の略で、顧客に関する情報を一元的に管理することで、適切なアプローチを実現し、顧客との良好な関係性を構築していく一連の取り組みのことです。

また、SFAとは「Sales Force Automation」の略語で、日本語では「営業支援ツール」と呼ばれます。顧客情報や商談情報、商談の進捗状況、営業担当の行動など営業に関するあらゆるデータを管理・活用することで営業活動の支援を行うツールです。

CRM/SFAツールの選び方やおすすめツールに関しては、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください。

2. コンテンツ整理、人材育成のための管理/学習ツール

続いて紹介するのは管理/学習ツールです。営業資料・動画といった社内のナレッジやコンテンツの蓄積・整理と営業向けの学習コンテンツ作成が一体になったものが多くなっています。ここでは3つのツールをご紹介します。

①ナレッジーワーク

ナレッジワークはセールスイネーブルメントプラットフォームです。「ナレッジ領域」「ラーニング領域」「ワーク領域」「ピープル領域」をカバーするオールインワンのシステムが特徴的です。

②Enable app

営業メンバーの強みや課題を分析し、数値に基づいて育成の計画や、効果検証をすることができます。また、役職に応じたスキルマップが用意されています。

③Handbook

セールスコンテンツの配信や管理だけでなく、動画・画像・HTML5などを活用したリッチコンテンツの配信ができることが特徴です。売りたい商品に対して的確な営業活動をする手助けになります。

セールスイネーブルメントの成功事例

1. Sansan株式会社

Sansanは、法人・個人向けに名刺管理サービスを提供する会社です。

元々、Sansanの営業部隊は顧客の従業員が〜999人であるSMB部隊と、1000人〜のエンタープライズ部隊に分かれて活動していましたが、会社の規模を拡大していくなかでエンタープライズ企業に注力することになりました。そこで、人手不足のためSMB部隊から人員を増やしたものの、両者の営業スタイルの違いからうまく機能しなかったことをきっかけにセールスイネーブルメントを推進し、人材開発をすることになりました。

Sansanの事例で特徴的なのは、人材開発に重きを置いてセールスイネーブルメントを進める多くの会社と違い、オペレーションフローも明確でなかったため総合的に改善を進めた点です。

まず、採用を強化し、入社後半年のプログラムを作成し、即戦力となる人材の確保に努めました。次に営業オペレーションを7段階に分け各段階でやることを可視化し、案件の管理方法の見直しを行いました。その結果、営業プロセスのどこで失注しているのかが可視化され、営業全体で改善すべき問題点に対しては専用の教育プログラムを作成し、弱点の克服に成功しました。

引用:https://seleck.cc/1312?_fsi=iLySTUww

2. NTTコミュニケーションズ

NTTコミュニケーションズは自前のネットワーク、クラウド、セキュリティやアプリケーションなどを利用し、企業の課題解決に努めるICT(通信情報技術)のコンサルティング会社で、国内の大企業でセールスイネーブルメントが成功している稀な例です。

大抵の場合、大企業は強みとする分野がすでに存在しているため、既存事業には営業の知見・ナレッジが蓄積されている場合が多く、セールスイネーブルメントでは新規事業に焦点が当たることが多いのが特徴です。NTTコミュニケーションズも同様で、複雑化した新しい商材を売ることを明確な目的として定め、セールスイネーブルメントに取り組みました。大企業ならではのビックデータをSFAやMAツールを活用して分析するプロジェクトチームを発足させ、データを活用したことで知られています。また、サクセスシェアリングを導入していました。

引用:https://enablement.app/casestudy/ntt-com-2/

3. セールス・フォースジャパン

Salesforceは、創業者によってグローバルに展開されて以来、長年セールスイネーブルメントに取り組んできました。Salesforceがセールスイネーブルメントを推し進める目的は高い成長率を維持するための「売る人を増やす」、「売るものを増やす」という2つの戦略にあります。

前者により新入社員が増えるため、教育が必要になります。また、後者については近年SlackやTableauなど新商品も増えたことで、営業は知識を常にアップデートする必要があります。このように目的を明確化したことが、成功につながったと言えるでしょう。

実際、Salesforceでセールスイネーブルメントのディレクターを務める田崎氏は営業チームに対して「〇〇という製品を売るためには、こういう知識が必要だから、このプログラムに参加してくだい」というふうに、目的を伝えることを大切にされているそうです。

引用:https://saleszine.jp/article/detail/4502?p=3

まとめ

本記事では、セールスイネーブルメントの基本から導入する際の具体的な手順、使用できるツールについて紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。

セールスイネーブルメントは、営業プロセスの効率化や一人一人の営業力育成を通して営業組織全体の底上げを図る取り組みです。成功すれば企業全体の売り上げ増加が見込めます。

一方で、社内の環境が整っていない、コストに対して成果が出るのか、など導入に関して多くの不安があると思います。

弊社では本記事でご紹介したセールスイネーブルメントに精通した経験豊富なコンサルタントが設計から運用まで支援しております。また、SalesforceをはじめとしたCRM・MAツールの導入や活用についてお困り事ございましたら、こちらの問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀

大学卒業後、株式会社TBI JAPANに入社。株式会社Paykeに取締役として出向し訪日旅行者向けモバイルアプリ及び製造小売り向けSaaSプロダクトの立ち上げを行う。
アクセンチュア株式会社では大手メディア・総合人材企業のセールス・マーケティング領域の戦略策定や業務改革、SFA・MAツール等の導入及び活用支援業務に従事。
株式会社Paykeに再入社し約10億円の資金調達を行いビジネスサイドを管掌した後、Strh株式会社を設立し代表取締役に就任。

▼保有資格
Salesforce認定アドミニストレーター
Salesforce認定Pardotスペシャリスト
Salesforce認定Pardotコンサルタント
Salesforce認定Sales Cloudコンサルタント

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