Salesforceを定着化させるには?活用課題や定着化に向けたハードル、取り組み事例を解説
この記事でわかること
- よくあるSalesforceの活用課題
- Salesforce定着化に向けて乗り越えるべき5つのハードル
- Salesforce定着化に向けた取り組み事例
執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀
Salesforceを導入したがなかなか現場で定着化しない、マネジメントが活用し切れていない。そういった悩みを抱えられている企業は多いのではないでしょうか。Salesforceはきちんと目的を持ち自社に合わせた運用を行うと、業務の効率化やデータの利活用ができ営業生産性の向上や収益の増加にも繋がるシステムです。
本記事ではSalesforce活用におけるよくある課題や、弊社が考える定着化に向けて乗り越えるべき5つのハードルをご紹介した上で、Salesforcceの定着化・活用に向けての具体的な取り組みをご紹介します。
Salesforceを定着化・活用をする上でよくある罠や取り組みを知った上で、自社の状況を改善するきっかけになれば幸いです。
参照:Salesforce(セールスフォース)は何がすごい?機能やメリット・デメリットを簡単に解説!
目次
1. Salesforce活用における課題
Salesforceの導入時は「Salesforceを導入して営業生産性を高め業務効率化したい」と誰しもが考えて導入を行ったかと思います。
しかし導入後、運用を行う中で様々な課題に直面し、Salesforceの活用を取りやめてExcel管理に戻してしまったり、局所的にしか活用できていない状況を受け入れてしまっている企業も多いのではないでしょうか。実際弊社にご相談いただく企業様でもそのような状態になっている企業も少なくありません。
ここでは、Salesforce活用における代表的な課題を確認していきましょう。
①営業担当者がSalesforceにデータを入力しない
Salesforceをトップダウンで導入したものの営業担当者が顧客情報や商談情報、活動情報を入力しないのはよくある課題だと思います。営業担当者のデータ入力が積極的に進まない理由としては大きく3点あると考えております。
操作方法や入力方法・ルールを理解していない
Salesforce導入初期によくありますが、現場担当へのトレーニングが不十分であったり、運用ルールが曖昧なまま運用を開始した結果、営業担当者が操作方法や入力方法・入力ルールなどが分からず入力をしないままになっているというケースです。
営業担当者が入力するメリットを感じられていない
営業担当者が商談情報や活動情報を入力することでどのようなメリットがあるのかを感じられていないので入力が進まないというケースです。
データが十分に溜まってくると、営業担当者にとってより営業効率を上げるためや自身の行動を改善するためのインサイトが得られるのですが、入力し始めた次の日からすぐ何かが変わるかといったら必ずしもそうではありません。そのため、積極的にデータを入力するインセンティブがないといった心理が働き、データ入力が進まないというケースです。
データ入力の工数負荷が高い
これは先述した運用ルールが曖昧である企業の逆で、運用初期から運用ルールをガチガチに決めており、営業担当者が入力しないといけない項目が多岐に渡ることで、営業担当者にとっては工数負荷が高くなり、結果徐々に入力しなくなるといったケースです。
営業担当者にとっては慣れない新しいシステムというだけで、心理的なハードルが高いにも関わらず、厳しく固められた運用ルールによって物理的なハードルも上がることで、入力されないシステムになってしまうパターンは実際の現場でもよく見かけます。
②データが入力されているが活用されていない
Salesforceにデータが入力されていても、そのデータが活用できていないと高い費用をかけた「無用の長物」といっても過言ではありません。データ活用がすすまない要因は個社ごとに異なりますが、ここでは代表的なものをいくつか紹介します。
導入時点で目的が曖昧
Salesforceの導入時点で何を目的にどのようにデータを活用するかが、営業部門内で不明確なことも意外とよくあります。
例えば、商談情報や活動情報を積み上げてデータは一定量保持しているものの、データ活用の目的が曖昧または決まっていないため、毎月の売上や商談件数のみをレポートで終始眺めるだけになっているというケースです。
マネジメントが活用方法を理解していない
営業担当者は商談情報や活動情報をきちんと入力しているが、営業マネジメントがそれらのデータをもとに、どのように行動に繋がるインサイトを抽出するかを理解していないというケースです。
旧来の経験と勘で営業活動を行っていた思考を抜け出せず、データを活用してチームスタッフの営業パフォーマンスをあげるための適切なフィードバックができず、チームスタッフも徐々に入力のモチベーションを失っていくといったこともあります。
③Salesforceの導入効果が実感できない
先述した営業担当者が入力するインセンティブが働かないといった話ともリンクしますが、マネジメントにおいても高いコストを払い導入したSalesforceの導入効果を感じられず、最悪解約に至るといったケースも少なくありません。
業務を変革することでの一時的な生産性の低下
Salesforceを導入するなど、既存業務を変革しようとすると生産性が低下する期間が必ず発生します。これは新たな業務やルールへの慣れであったり、心理的なハードルも起因します。マネジメントはこのポイントを理解した上で、この生産性低下の時間・度合いを最小化するとともに、Salesforce導入の効果最大化と継続的に生産性が向上する仕掛けの設計と現場への装着を行う必要があります。
④Salesforceの設定方法や改善方法が分からない
これはSalesforceの管理者や運用担当者によくある課題ですが、導入時はインプリベンダーに構築作業を行ってもらい簡易なレクチャーは受けたものの、運用を行う中で様々な部門からのオーダーに対して対応するための設定方法が分からなかったり、より営業が活用しやすいようなシステムにするための改善方法が分からないといったケースです。
これが常態化すると、各部門は活用に向けたリクエストやオーダーを投げることをためらうようになり、最終的に諦められることで全体のSalesforce定着化・活用がステップしてしまいます。
2. Salesforce定着化・活用に向けた5つのハードル
ここまでSalesforce活用における代表的な課題を説明しましたが、ここからは前述したよくある課題も踏まえて弊社が考えるSalesforceの定着化・活用に向けた乗り越えるべき5つのハードルをご紹介します。
もちろん個社によって活用課題は様々ですが、自社の活用状況は今どのステップにあるのかを確認する際の参考としてご覧ください。
データ入力のハードル
まず最初のハードルは営業担当者のデータ入力のハードルです。
データが入力されない理由としては様々ありますが、以下のような事象がよくある落とし穴だと考えています。
- 従来の慣れたコミュニケーション手段で営業数字の報告を行ってしまう
- 営業ノウハウの流出を避けて、データの入力・可視化を控えめにする
- 評価を気にして成約案件ばかり登録する
このフェーズでは入力行為を習慣化させるための仕掛けや仕組みが必要になります。具体的な取り組みについては後述いたします。
入力データの質のハードル
一定データの入力が進むと次に出てくるのが入力データの「質」のハードルです。
入力の習慣化をさせるためにKPIとして入力件数のみを設定していると、入力自体が目的化し、入力されたデータの内容であったり、精度が不十分になるケースがよくあります。
また、活動記録や商談のプロセスデータを入力せずに商談結果のデータのみを入力する状態が続くと、営業行動改善などのアクションに結びつかないといった課題も散見されるのがこのフェーズです。
マネジメントの活用ハードル
データの入力が質・量ともに十分になってくると、次は営業担当者をマネジメントする営業マネージャー等のマネジメントのデータ活用ハードルがあります。
例えば、営業マネージャーがSalesforceを確認せずに従来利用していたExcel上の営業数字を確認しながらマネジメントを行ってしまうケースがあります。
その他にも、Salesforceを確認しながら営業担当者とコミュニケーションは取るものの、受注件数や売上金額の予実など結果データにのみ着目し、具体的に営業活動の改善に繋がるようなプロセスデータまでは確認せず、結果として営業生産性や営業成績があがらないといった課題にぶつかるのはこのフェーズです。
データ分析・フィードバックサイクルのハードル
次にSalesforce上に保存されているデータをどのように誰が分析し、現場にフィードバックするのか、そのサイクルが確立できないといったハードルがあります。
データの量も質も一定が担保されている状態で、使えそうなデータはたくさんあるが何をどのように分析してインサイト導き出せばよいのかが分からないといった課題です。また、企業によってはデータ分析を行う主管が営業マネージャーなのか、営業企画部門なのかが不明確でお互いにお見合いをして活用が進まないといったこともあります。
Salesforce上に保存されているデータ資産を「誰が」「何を目的に」分析して、「どのように」現場の営業活動に活用していくのか。ここをマネジメントや企画部門含めてコンセンサスを取り進めていく必要があるのがこのフェーズです。
参照:【初めてのデータ分析】ビジネスマン必須スキル!知っておきたいデータ分析の基本
効果実感のハードル
最後のハードルは効果実感のハードルです。
具体的には、各営業担当者やマネジメントそれぞれがSalesforceを活用して、その効果が定量・定性面で実感できているのかということです。Salesforceを活用することで定性的にでも売りやすくなったと感じたり、定量的に自身の営業成績があがったりすれば分かりやすいですが、運用のなかで多くの人が本当に成果に結びついているのか自信を持てないといった心理になることもあるかと思います。
そして自身が持てないために活用も徐々に減少していった結果、使われなくなるといったこともあります。効果を実感して活用を自発的に進めてもらうために、部や会社としても取り組みの成果をきちんと取り上げる仕掛けを作ったり、定量的に導入前後の効果を示す必要があるのがこのフェーズです。
3. Salesforce定着化に向けた取り組みの具体例
ここからはSalesforce定着化・活用のハードルを乗り越えるべく、定着化に向けた取り組みの具体例をいくつか紹介します。
営業の通常業務への埋め込み
広告代理店A社ではこれまで営業進捗の共有はマネージャーと営業担当者間で週1度不定期に実施していましたが、毎日夕方に夕礼を設置しそこで営業進捗を報告しマネージャーからフィードバックを得る機会を作りました。
そして夕礼後、マネージャーからのフィードバックをもとに各保有顧客に対するネクストアクションの即時登録を義務付けることで、Salesforceへの入力率をあげることに成功しました。
トップダウンによるデータ入力の強制化
総合人材企業B社では、社長や営業担当役員がSalesforce導入の目的や背景を明確に定義し、社員とのコミュニケーションの場や対外的な露出機会で繰り返し、その内容を発信し続け自らもSalesforceのデータを見ることをコミットメントしました。
営業マネージャーレベルでも営業担当者とのコミュニケーションの際はSalesforceのデータを参照するルールを徹底することで、営業担当者のデータ入力率を大幅に向上させることに成功しました。
営業会議での徹底活用
不動産企業D社では、定例の営業会議で進捗報告のExcelやPower Pointの利用を禁止し、Salesforceのレポート・ダッシュボードを見ながら数字の報告やフィードバックを行うことをルール化しました。更にいくら口頭で数字の進捗や行動量を報告されたとしても、Salesforce上でその数字が確認できなければ、全く評価しないという部門内ルールを設定することで、入力率が飛躍的に向上しました。
また、その営業会議の場においてSalesforceのレポート・ダッシュボードの数字から、具体的な営業改善点や顧客へのアクションを必ず報告するということを義務付けることで、営業部内にデータ活用の習慣を定着化することにも成功しました。
競争意識の醸成
総合人材企業E社では、本社がSalesforce上で各支社の売上進捗や商談プロセスの進捗、行動量などのデータをモニタリングし、活用に積極的でやる気のある支社に対して本部が徹底的にサポートを行うことにしました。意図的に先行事例を作り出し、支社間で自発的にSalesforce活用の競争意識を醸成させることで、全社としてのSalesforce定着化・活用を成功させました。
4. StrhのSalesforce定着化・活用支援
Strh(ストラ)ではクライアントのSalesforceの定着化・活用に向けて、個社状況や課題に合わせた定着化・活用支援を行っています。
ご支援のアプローチ
弊社の提供するSalesforce定着化・活用支援では一般的に以下のご支援アプローチでプロジェクトを推進させていただきます。
01:初期課題及び背景整理とゴール設定
ヒアリングやディスカッションを通してお客様のSalesforce活用課題やその背景の整理とあるべき姿を定量・定性で設定します。
02:現行システム・ツールのアセスメント
現在利用されているシステム・ツールの利用状況や設定内容などを調査します。
03:プロジェクトアプローチのご提案
初期課題やゴール、アセスメントを通して整理した課題をもとに、プロジェクトの進め方・支援内容についてご提案差し上げます。
04.活用・改善の実行
合意した内容に基づいて活用・改善の実行を行います。実施内容はプロジェクト・クライアントの状況に合わせて柔軟に対応させていただきます。
05.トレーニング
必要に応じてお客様担当者に対するSalesforceの操作や設定のトレーニングを実施します。また、他社事例のご紹介などお客様のご要望に合わせて対応いたします。
お客様の取り組みフェーズに合わせた支援
お客様のSalesforceを活用した業務の取り組みの状況や課題感をもとに、お客様ステージに合わせたSalesforce定着化・活用支援を実施いたします。
まずはSalesforce活用の目的を明確に定義し、そこに対して現在定着化を阻害する要因は何かを突き止めることが重要になります。Salesforceを活用して営業生産性の向上や収益増加に繋げるために、正しく現状を把握し活用フェーズに合わせた施策を検討・実施しましょう。
本記事にてご紹介したSalesforceの定着化や活用に課題を感じられている方は、まずはお問い合わせフォームよりお気軽に弊社にご相談ください。
執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀
大学卒業後、株式会社TBI JAPANに入社。株式会社Paykeに取締役として出向し訪日旅行者向けモバイルアプリ及び製造小売り向けSaaSプロダクトの立ち上げを行う。
アクセンチュア株式会社では大手メディア・総合人材企業のセールス・マーケティング領域の戦略策定や業務改革、SFA・MAツール等の導入及び活用支援業務に従事。
株式会社Paykeに再入社し約10億円の資金調達を行いビジネスサイドを管掌した後、Strh株式会社を設立し代表取締役に就任。
▼保有資格
Salesforce認定アドミニストレーター
Salesforce認定Pardotスペシャリスト
Salesforce認定Pardotコンサルタント
Salesforce認定Sales Cloudコンサルタント