現場でも混同しがちなセグメンテーションとターゲティングの違いとは?

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現場でも混同しがちなセグメンテーションとターゲティングの違いとは?

実際の現場でもよく聞く言葉であり、セールス・マーケティング活動における重要なポイントの1つでもある「セグメンテーション」と「ターゲティング」。実際の業務現場では「セグメントする」や「ターゲットを選定する」であったり、「セグメントを決める」、「ターゲットを決める」などとも言われたり、同じ意味で使われていたり人によって言葉の定義が異なったり混乱を招くことも多いのではないでしょうか。

そこで今回は、改めて「セグメンテーション」と「ターゲティング」の違いを実例も交えて紹介します。

セグメンテーション(セグメント)とターゲティング(ターゲット)の違いとは?

セグメントとは直訳すると「集団やまとまりを区切った区分」のことを指し、マーケティングでは市場(不特定多数の人々・企業)を同じニーズや課題感、性質を持つグループに細分化し分けることをセグメンテーションといいます。

セグメンテーションとターゲティングの違い

マーケティングにおけるターゲティングとは、セグメントした市場のうち、自社製品やサービスを投入する「標的」市場を決めることです。

これらから分かるように、「セグメントした市場や顧客層のなかでターゲットを決める」というような前後関係があり、深く関係しているため混同しがちですが、マーケティング担当者としては明確に区別しておきたいところです。

また、マーケティングには「ペルソナ」という言葉もあり、「ターゲット」と同じ意味で使われるケースも多々目にします。ペルソナとは「企業が提供する製品・サービスにとって、象徴的なユーザモデル」のことで、複数の属性データや行動データを調査し、それらのデータを統合し作り上げた仮想の人物です。

ターゲットを人格化することによって、より具体的で精度高く、関連メンバーと認識を共通化しやすくなることで、マーケティング施策のブレが少なくなるというメリットがあります。

参照:【DLできるテンプレート公開】ペルソナとは?作り方の5つのステップや具体的な活用方法を解説

セグメンテーションを行う視点

セグメンテーションを行う際は、どの企業にも活用できる最適な基準や方法が存在するわけではなく、自分たちの手で最善の方法を導き出すことになりますが、その際の「拠り所」になる4つの視点を紹介します。

セグメンテーションの4つの視点
  1. デモグラフィック変数(人口動態属性)
  2. ジオグラフィック変数(地理的属性)
  3. サイコグラフィック変数(心理的属性)
  4. ビヘイビアル変数(行動属性)

1.デモグラフィック変数(人口動態属性)

年齢・年代・性別・世帯構成・所得・職業・宗教・国籍などによって、セグメンテーションする方法

デモグラフィック変数

2.ジオグラフィック変数(地理的属性)

国(国内か海外か)・地域(東日本や西日本など)・都市の規模・人口密度・気候などによって、セグメンテーションする方法

ジオグラフィック変数


3.サイコグラフィック変数(心理的属性)

生活者や企業の価値観などを調査することで、社会的階層・ライフスタイル・パーソナリティなどによって、セグメンテーションする方法

サイコグラフィック変数

4.ビヘイビアル変数(行動属性)

購買状況やwebサイトへのアクセス回数・頻度・利用率・継続率・利用者のタイプ(利用中・過去に利用した・利用したことがないなど)・ロイヤリティ・購買意向などによって、セグメンテーションする方法

ビヘイビアル変数

ターゲットとすべきセグメンテーションの評価

市場のセグメンテーションによって有望な市場が浮き彫りになると、自社の経営資源や環境要因など6Rと呼ばれる観点なども参考に評価し、総合的にターゲットとするセグメントを決定します。

6R
  • 有効な市場規模:Realistic Scale
  • 成長性:Rate of Growth
  • 顧客の優先順位 / 波及効果:Rank/Ripple Effect
  • 到達可能性:Reach
  • 競合状況:Rival
  • 反応の測定可能性:Response

1.有効な市場規模:Realistic Scale

有効な市場規模とは、事業やサービスを成立させるために、一定の量の顧客と需要が見込まれるような規模があることです。

市場規模は省庁や自治体、民間調査会社や業界団体が発表しているデータを活用したり、それら複数のデータから算出することで確認します。

また、市場規模が小さくても後述する市場の成長性や、市場の課題が深く代替性の低いソリューションを提供できるのであれば、その市場で大きなシェアを獲得することもできるため、市場規模の見極めはとても重要です。

有効な市場規模

2.成長性:Rate of Growth

成長性は、市場の成長率を指す指標であり、一般的には市場の売上高成長率や収益率・収益成長率などから分析することができます。

参入する市場の成長性は重要な要素で、一般に市場の生成期や成長期などの初期に売上やシェアを獲得できるチャンスが大きく、技術の発達や市場構造の変化により中長期で成長する市場もあります。

逆に減退期を迎えている市場や、今後成長性が望まれない市場ではないかなどの見極めも重要です。

成長性

3.顧客の優先順位 / 波及効果:Rank/Ripple Effect

セグメントを分けたら、どこからアプローチすべきかの優先順位を付けましょう。周辺のセグメントへの影響力が強いセグメントなどがあれば、優先順位も上がっていきます。

例えば、スポーツ用品メーカーであれば、一般的にアマチュア選手はプロ選手に憧れを抱いたりプロが使っている道具を使いたいなどの願望があることが考えられるため、①プロスポーツ選手②アマチュア選手といった順に優先順位をつけてターゲティングするなどが考えられます。

顧客の優先順位/波及効果

4.到達可能性:Reach

到達可能性とは、そのセグメントにリーチできるかの可能性を指します。自社資源を考えた時に、リーチできない・リーチが困難なセグメントは的確なアプローチができないため、ターゲットとするには得策ではないケースがあります。

例えば、地理的に遠かったり、ターゲットが利用しているチャネルと自社が展開しているチャネルが大きく異なる場合などもこのケースに当てはまります。

到達可能性

5.競合状況:Rival

競合状況とは、競合他社が取り扱っている製品やサービスのシェア率や獲得数を把握する指標です。参入しようとする市場で、すでに競合が大きなシェアを獲得している場合は市場の魅力度は低減します。

逆に、既に市場で競合が一定のシェアを獲得していたとしても、競合の優位性が小さい領域で差別化できれば、シェアを獲得できる可能性や新しいポジションを獲得できる可能性があります。

競合状況

6.反応の測定可能性:Response

反応の測定可能性とは、アプローチした効果を測定するために判断する指標のことです。参入予定の市場でとったアクションに対して、結果やプロセスを測定する必要があります。

加えて、セグメントの規模や購買力を測定・把握できなければ参入すべきかの判断もしかり、アクションに対する改善もできないため、測定が可能な市場なのかは見極めましょう。

反応の測定可能性

セグメンテーションとターゲティングの事例

ここからは実際にセグメンテーションやターゲティングを用いて、ビジネス成長を遂げた企業の事例をいくつか紹介します。

アニコム損害保険のペット保険の事例

成熟市場でかつ競合他社も数多く存在するレッドオーシャンにおいて、新たに市場参入する企業が独自の市場を見出す場合、「自社の優勢をどのポジションで活かせるか」「将来にわたってその市場に成長性があるか」がセグメンテーションを行う際のポイントになります。

損害保険市場はまさにこのような市場でしたが、アニコム損害保険は、従来の損害保険の対象領域である「人」と自動車などの「モノ」以外での市場性に着目し、サイコグラフィック的セグメンテーションのなかで「ライフスタイルの変化」という切り口から、国内の少子高齢化が進み内需が縮小していく中で犬や猫をペットとして飼い、一緒に暮らす人たちが増大しており、ペットの数が子どもの数より増加しているという事実に着目し、この市場で独自のポジションを築きました。

ハウス食品のウコンの力の事例

レトルトカレーなど食品メーカーとして一定の市場シェアを獲得していた同社は、当時、消費低迷による低価格業態の台頭や、産地偽装問題など食品メーカー自体への逆風も強まるなか、安売りせず販売できる新商品の開発に注力していました。そこで同社が着目したのが「定期的に飲酒をする習慣がある人」「継続的に栄養ドリンクを飲む人」「アルコールによる肝機能低下を心配する人」「理由があれば価格が高くても購入する人」といった、ビヘイビアル的セグメンテーションであり、その商品要素としての「ウコン」でした。

ウコンという素材はこれまでのカレー製造においてノウハウがあり、加工技術という優位性を持っていた同社は、臨床試験の結果とともに飲みやすさにも重きを置いた商品仕様に仕立てて「ウコンの力」を市場に投入。結果、潜在需要を顕在化させることに成功し、更に飲酒機会が多い層を想定顧客に設定したことで、飲酒機会が生じるたびに「ウコンの力」の飲用意欲が高まり、継続購入が行われたことで新しい市場の創造につながりました。

まとめ

今回はセグメンテーションとターゲティングについて改めてその違いや、セグメントの切り口やターゲティングによって、新市場が創造された事例や新サービスが市場を獲得する事例について紹介しました。

自社のサービスやプロダクト、相対する市場によってセグメントの切り口は様々で、どのセグメントをターゲットにするかでビジネスインパクトも大きく異なるため、これらを社内でじっくり検討することは、とても重要であることを理解いただけたと思います。

Strh(ストラ)では、セグメンテーションやターゲティングはもちろん、マーケティング戦略の策定からアクションの実行支援まで一貫して、実績を持ったコンサルタントがご支援します。

自社のマーケティング活動を見直したい、改善方法に新たな視点が欲しい、これからマーケティング組織を立ち上げたい等でお困りごとがありましたら、お問い合わせフォームより、お気軽にご相談ください。

 

執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀

大学卒業後、株式会社TBI JAPANに入社。株式会社Paykeに取締役として出向し訪日旅行者向けモバイルアプリ及び製造小売り向けSaaSプロダクトの立ち上げを行う。
アクセンチュア株式会社では大手メディア・総合人材企業のセールス・マーケティング領域の戦略策定や業務改革、SFA・MAツール等の導入及び活用支援業務に従事。
株式会社Paykeに再入社し約10億円の資金調達を行いビジネスサイドを管掌した後、Strh株式会社を設立し代表取締役に就任。

▼保有資格
Salesforce認定アドミニストレーター
Salesforce認定Pardotスペシャリスト
Salesforce認定Pardotコンサルタント
Salesforce認定Sales Cloudコンサルタント

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