【図解】SWOT分析とは?目的や実施方法、ポイントなどを徹底解説
この記事でわかること
- SWOT分析を構成する4要素と分類
- SWOT分析はなぜ必要なのか?
- SWOT分析のメリット・デメリット
- SWOT分析を実施するべき企業の特徴
- SWOT分析の実施方法とポイント
- SWOT分析はどのような観点で分析すれば良いのか?
執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀
SWOT分析という分析方法をご存じでしょうか?SWOT分析が誕生してから半世紀程経つので、言葉自体は知っている方も多いかもしれません。
しかし、名前は聞いたことがあるものの、実際にどう使うのか、どういう場面で効果を発揮するのか、分からない方も多いかと思います。本記事ではこのような方に向けて、具体例を交えてSWOT分析の目的や実施方法などをまとめて紹介します。
SWOT分析をはじめとした、競合サイト分析の基本はこちらの記事で解説しておりますので合わせてご一読ください。
目次
1.SWOT分析とは?
まずはSWOT分析(スウォット分析)の概要と要素について、ご紹介します。
SWOT分析の概要
SWOT分析とは経営学者のヘンリー・ミンツバーグが提唱し、1960年代中盤にハーバードビジネススクールが経営戦略策定プロセスとして明確にしたフレームワークで、自社の現状を強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の四つの要素から分析し、この四つの言葉の頭文字を組み合わせてSWOT分析と名付けられました。
事業計画を立てるに当たりSWOT分析を行うことで、企業や事業の現状を分析、整理し、経営戦略や課題解決を効率的に行うことができます。
SWOT分析における4要素
次にSWOT分析を構成する4つの要素について確認していきましょう。
S:強み(Strength)
SはStrengthの頭文字であり、自社の強みを指します。自社や自社が提供する事業・商品の長所であったり、それらにプラスの影響を与える社内環境についての項目がここに分類されます。
W:弱み(Weakness)
WはWeaknessの頭文字であり、自社の弱みを指します。Sとは対照的に、自社や自社が提供する事業・商品の短所であったり、それらにとってマイナスの影響や支障がありそうな社内環境についての項目がここに分類されます。
O:機会(Opportunity)
OはOpportunityの頭文字であり、自社にとっての良い機会のことを指します。自社や自社が提供する事業・商品が社会に浸透するためのより良い環境や、それらにプラスに働く外部環境についての項目がここに分類されます。
T:脅威(Threat)
TはThreatの頭文字であり、自社にとっての脅威のことを指します。Oとは対照的に、自社や自社が提供する事業・商品の成長を妨げる環境や、それらにマイナスに働く外部環境についての項目がここに分類されます。
内部環境と外部環境について
上記の4つの要素は内部環境と外部環境に分類することができます。
内部環境とは、自社で保有するリソースのことであり、「S:強みとW:弱み」がこれに当たります。自社でコントロールできる要素を詳細に分析することで、伸ばすべき強みと克服すべき弱みを明確にすることができます。
外部環境とは、自社を取り巻く環境のことであり、「O:機会とT:脅威」がこれに当たります。1つの企業ではコントロールできない社会動向や市場動向を分析することで、新しい営業機会を発見したり、将来起こりそうな脅威を予測することができます。
自社の状況を社内と社外の二つの方向に分けて分析することで、客観的に現状を把握することができ、今まで見えてこなかった長所や短所に気付くことができるでしょう。
2.SWOT分析の目的
このように、SWOT分析では自社の現状を内部外部2つの方向から4つの要素に分けて分析することができ、そこから経営戦略を練ったり課題を解決することができます。
では、SWOT分析はどういう目的で行うと効果的なのでしょうか?
SWOT分析はなぜやるべき?
SWOT分析を行うことで得られる、自社や事業の現状の整理は、経営戦略やマーケティング戦略を考える上で欠かせません。また、そこから推測できる将来的なチャンスや危機も戦略を立て進めていく中でかなり重要です。自社にとって見えにくい課題や欠点を可視化しやすく、一つのフレームワークで2つの視点から物事を見ることができます。
SWOT分析は古い?
一方で、SWOT分析は過去の分析方法で、現代では通用しないと考えている方も中にはいらっしゃるかもしれません。
SWOT分析は半世紀程前の高度成長期の時代に発案されたと言われています。経済が大きく発展していく中、いち早く機会を捉え、強みを活かして事業を伸ばすことが大きな鍵となっていたため、素早く現状を整理できるSWOT分析は大いに活躍しました。
しかしそこから時代が流れ、ビジネスやニーズが多様化した現代においては、ただSWOT分析をしても情報の整理をして終わってしまうことも少なくありません。現代でSWOT分析を行う際には、他のフレームワークも利用して、使うべき時に正しく使いこなすことが大切です。
参考:ビジネスで定番の「SWOT分析」は時代遅れ/日経ビジネス2016.05.11
SWOT分析を実施するメリット・デメリット
次にメリットとデメリットについて、確認しましょう。
メリット
SWOT分析はシンプルな作りになっており、内部と外部の2面から分析できるため、全体像を素早く客観的に捉えることができ、今まで見えてこなかった課題やリスクを可視化することができます。そのため、既存事業だけでなく新規事業を発足する際においてもマイナスな要素を見つけることができ、戦略を立てる上での抜け漏れを防ぐことが可能です。
デメリット
シンプルな作りになっているからこそ、情報の整理で終わってしまう可能性があるため、しっかりと戦略につなげることが大切です。また、プラス面とマイナス面は表裏一体であることが多いため、どちらの面もあることを考慮して分析を進めることが重要です。
3.SWOT分析を実施するべき企業
ここでは、SWOT分析を実施するべき企業の特徴を紹介します。
市場変化に直面している企業
市場の変化に直面している企業は、SWOT分析で一度現状を確認してみても良いかもしれません。新規参入企業などの新しい競争相手が出現したり、消費者の嗜好に変化があったり、近年の技術の進歩の影響があったりと市場が変化した場合、自社の強みや弱みにも変化がある可能性があります。
成長段階にある企業
成長段階にある企業も、SWOT分析に向いています。事業の拡大や多角化を検討中であったり、新しい市場への進出を計画していたり、製品ラインの拡張を考えている場合、まだ企業が気付いていない強みも機会も多くある可能性が高いです。また、これから始める事業に対し、早めにリスクを知ることができ、失敗を回避することができます。
業績が停滞または低迷している企業
次に、業績が停滞または低迷している企業について、一度状況を見直すことで現状を把握する必要があります。売上や利益の減少、市場シェアの低下などが見られた時、SWOT分析を行うことで原因を明らかにすることができます。オペレーショナルな課題を見つけ、改善することが重要です。
戦略的転換を考えている企業
現状に不備がなくても、戦略の転換を考えている企業も、SWOT分析を取り入れることで今まで見えてこなかった強みや機会に気付くことができるかもしれません。事業方針の変更や社内文化の変革などをする際の指標になったり、経営陣や組織の再構築、新しいリーダーシップなどを考え直す際の課題を見つけることができます。
外部環境の変化に敏感な企業
外部環境の変化に敏感な企業は、SWOT分析などの分析方法を用いて、機会と脅威の変化を常に把握しておく必要があるでしょう。インフレーションや為替レート、社会的なトレンドといった経済環境だけでなく、法規制の変更や環境的なトレンドなどの分野にも目を向け、把握し続けることが重要です。
資源配分を再考している企業
最後に、資源の分配を再考している企業について、SWOT分析をすることで効率よく見直しをすることが可能です。自社が置かれている外部環境を整理することで、それに合った内部環境を見出すことができるため、コスト削減の有要否や投資の優先順位の見直しなどが可能となり、人材や技術資源を最適に活用することができます。
4.SWOT分析の実施方法
では、実際にSWOT分析を行う際の手順についてご紹介します。
①目的・目標を決める
すぐに手を動かして分析を始めるのではなく、まずは目的と目標を明確に決めましょう。目的と目標を具体的にしておくことで、SWOTの各要素や集める情報などの解釈を揃えることができます。また、分析を進めていくうちに方向性がずれたとしても気付きやすく、早めに修正することができます。
参考:【初めてのデータ分析】ビジネスマン必須スキル!知っておきたいデータ分析の基本
②外部環境を分析する
目的と目標が決まったら、外部環境の分析に取り掛かりましょう。自社でコントロールできる内部環境は外部環境の影響を受けやすいため、先に外部環境から分析することをおすすめします。どんな環境であっても自社にとってプラスの面とマイナスの面は必ず存在するため、物事を多角的に見ることが重要です。
有効なフレームワーク
- PEST分析:政治(Politics)・経済(Economy)・社会(Society)・技術(Technology)の4要素から外部環境を細かく分析する。
- 3C分析:市場・顧客(Customer)競合(Competitor)自社(Company)の3要素からマーケティング環境を分析する。
- 5F分析:業界内競争・新規参入者・買い手の交渉力・売り手の交渉力・代替品の存在の収益に直結する5要素から脅威(Forces)を分析する。
③内部環境を分析する
外部環境の整理が終わったら、内部環境の分析を行います。内部環境は分析者の主観が入ってしまうため、できるだけ客観的に見るよう心がけましょう。先に分析した外部環境に対してどうかではなく、自社の強みと弱みを外部環境と切り離して考える必要があります。
有効なフレームワーク
- 4C分析:顧客価値(Customer Value)・コスト(Cost)・利便性(Convinience)・コミュニケーション(Communication)の4要素を顧客目線で分析する。
- 4P分析:製品(Product)・価格(Price)・流通(Place)・販促(Promotion)の4要素を企業目線で分析する。
- VRIO分析:価値(Value)・希少性(Rareness)・模倣可能性(Imitability)・組織(Organization)の4要素から自社の経営資源の競争優位性を分析する。
④クロスSWOT分析を使用して戦略を立てる
自社を取り巻く環境を4つの要素に振り分けられたら、それらを掛け合わせるクロスSWOT分析を行って4種類の戦略を立てていきます。それぞれを具体的な戦略や計画まで落とし込み、仮説を立てて考察することで、目標を達成するためにより優れた戦略を練ることができます。
S強み×O機会(SO戦略)
強みを自社にとって有利に働きやすい環境で活かし、事業を成長させるための戦略。
S強み×T脅威(ST戦略)
強みを利用することで、自社の障害となる脅威を回避する戦略。
W弱み×O機会(WO戦略)
弱みを克服または改善する方法を探し、チャンスとなる機会で活かす戦略。
W弱み×T脅威(WT戦略)
弱みを理解し、脅威による影響を回避または最小限に抑える戦略。
5.有意義なSWOT分析結果を得るためのポイント
SWOT分析を行う上で、有意義な結果を得るためのポイントについて確認していきましょう。
SWOT分析のメリット・デメリットをしっかりと理解する
SWOT分析はシンプルな分析方法です。それ故に、メリットとデメリットが存在し、必ずしも正確な分析ができるとは限りません。特徴を理解してから使用し、分析結果を信じすぎないことも大切です。
SWOT分析の目的、目標を明確化する
分析を始める前に、目的や目標は明確化して必ず分析するメンバーと共有しておきましょう。そうしないと4要素を振り分ける際の解釈にずれが生じてしまう可能性があります。前述にもありますが、分析対象を確定させることで4要素の選出がしやすくなり、分析を進める上で方向性を揃えることができます。
前提となる現状を明確化する
SWOT分析は自社や事業の現状を整理する分析方法です。そもそもの分析対象である顧客層や市場、自社の状況などの認識が人によってずれていては元も子もありません。前提となる現状を明確にし、メンバーと確認しておきましょう。
さまざまな人の意見を取り入れる
目的や目標を明確にし、方向性を揃えていても、4要素に対する解釈は人それぞれです。特に内部環境は当事者の主観が大きく反映されてしまうため、部門や立場、年齢など様々な視点の意見を取り入れることが重要です。そうすることで、抜け漏れなく要素を出すことができ、現状を全体的に把握することができます。
5.SWOT分析観点(項目)の具体例
最後に、SWOT分析を行う際にどのような観点(項目)で分析すればよいかを内部環境と外部環境に分けて具体例をご紹介します。
内部環境(SW)は各項目について強み・弱みを、外部環境(OT)については各項目について機会・脅威になりそうな内容を検討・整理することで、戦略策定時の重要なインプットになります。以下の項目以外にも観点(項目)は存在しますが、例として参考にしていただければと思います。
内部環境(SW)
- 技術力・ノウハウ
- 商品やサービスの品質・価格・市場シェア
- 顧客のデータ・ネットワーク
- 社員の人数・スキル・知識
- 設備・システム・業務プロセス
- 認知度・ブランド力
- 立地・営業拠点数
- 財務状況
- インフラ
外部環境(OT)
- 市場規模・動向・成長性
- 新規市場と顧客層
- 競合他社の動向
- 景気や経済状況・社会情勢
- 技術の革新・変化
- 流行や話題性
- 顧客ニーズ・トレンドの変化
- 政治状況
- 法律・法改正
- 周囲の環境
6.まとめ
今回はSWOT分析についての概要や実施方法などを紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
ニーズやビジネスが多様化している昨今、さまざまな分析方法があり、その中でもSWOT分析は代表的なものかと思います。ぜひこの記事を参考に、コツを抑えてSWOT分析を行ってみてください。
またStrhでは事業戦略やマーケティング戦略でお悩みの企業様に対して、コンサルティングサービスを提供しております。事業戦略やマーケティング戦略活動でお困りごとがございましたら、お気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。
執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀
大学卒業後、株式会社TBI JAPANに入社。株式会社Paykeに取締役として出向し訪日旅行者向けモバイルアプリ及び製造小売り向けSaaSプロダクトの立ち上げを行う。
アクセンチュア株式会社では大手メディア・総合人材企業のセールス・マーケティング領域の戦略策定や業務改革、SFA・MAツール等の導入及び活用支援業務に従事。
株式会社Paykeに再入社し約10億円の資金調達を行いビジネスサイドを管掌した後、Strh株式会社を設立し代表取締役に就任。
▼保有資格
Salesforce認定アドミニストレーター
Salesforce認定Pardotスペシャリスト
Salesforce認定Pardotコンサルタント
Salesforce認定Sales Cloudコンサルタント